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其の7 季節の変化と体(指田)

柳澤先生のお宅の猫も、夏を迎える準備で毛が抜けかわっているとのことである。
犬なども、改良を重ねた室内犬などはシングルコートで通年あまり毛が抜けないものもあるが、野生を残している日本犬などは、上毛(表毛)と下毛(綿毛)があり、春と秋の毛換期には、枕が一つ作れそうなくらいごっそりと毛が抜ける。

人間の体も、毛こそ抜けかわらないが、やはり季節の移り変わりに適応するべく、たえず変化をしている。
暑い夏には、体は弛み、開き、放熱モードになる。そして、同時に冷却装置としての発汗機能も高まる。
冬には、寒さに耐えるために体は閉じてきて、骨格も筋肉も皮膚も引き締まってくる。

冬に閉じて引き締まった体は、春先、といってもまだ寒い1月の中旬~下旬頃から、少しずつ春の準備を始める。この頃、まずは後頭骨が開き始める。

後頭骨が開くという表現は一般的ではないが、整体ではよく用いられる。頭は頭蓋骨という骨の塊だが、その実いくつもの骨が組み合わさって出来上がっている。その繋ぎ目を縫合部というが、その縫合部には多少の遊びというか余裕があり、体の状況に応じて微妙に動いている。
例えば、物事に深く集中しているときは頭は引き締まり小さくなっている。一日働いて頭が疲れてくると、夕方には頭が拡がって大きくなり帽子がきつくなったりする。一日の中でも変動するが、四季の変化に対応して、もう少し大きなリズムでも変化している。

春を待つ1月の後半に、後頭骨は弛み、開き始める。この頃、まるで先触れのように花粉症的症状を呈する人がいる。上下的体癖傾向を持つ神経系が敏感な人に多いが、これは後頭骨が開いてきたことに付随する体の過敏現象である。実際にはまだ杉の花粉は飛んでいないのだが、目鼻にムズムズ、グズグズと症状が出るのだ。
「花粉症」 というぐらいだから、花粉が症状を引き起こす原因になっているのは間違いないだろうが、実は花粉そのものよりも体の方に根本的な問題があって症状が起こるということが、このことからも分かる。

後頭骨から始まる春の変化は、次第に肩甲骨、骨盤と波及していく。後頭骨に連動して肩甲骨が弛み開き、続いて骨盤も開いていくのだ。そして、この一連の春の変化が上手くいかない人が、花粉症になる。

花粉症は、整体的に言うならば、春の体に変わっていく途上に閊えがある人が、体の一部を過敏にして、何とかその変化を促進させようと奮闘している姿である。過敏にしているのは体自身の振る舞いであり、花粉の方は利用されていると言ってもいいかもしれない。そうして見れば、悪者にされている花粉の方こそ好い面の皮である。

過敏というのは、体のどこかに鈍りがあるための代償作用である場合が多い。花粉症も、季節の変化に上手に対応しきれない鈍りを抱えた体が、部分的に過敏を作ることでバランスを取っているのである。
だから、体が整ってくると、いつの間にか花粉症の症状は無くなってしまう。もしくは、かなり軽減される。
私も整体を始める前は花粉症の代表選手のようであったが、今では3月頃に2週間ほど、多少鼻がむずむずする程度で済んでいる。

しかし、花粉症をやれる人は、まだ本格的には鈍くない人であるとも言える。本当は体の働きが鈍っていて全く季節に対応できていなくても、風邪を引くことも花粉症になることもできずにいる人もいる。そういう人こそ、体の働きが鈍麻した、健康から最も遠い人である。

さて、後頭骨、肩甲骨、骨盤と続いて行く春の開きの変化だが、これが秋になると、今度は寒さに向かって頭から順に骨盤までが閉じていくのだ。体はしっかりと閉じることで、冬の寒さに耐えうるのである。

このように、体は季節を先取りし、また時に何とか追いつこうとしながら絶えず変化し続けている。この季節に対応する体の変化を上手く助けていくことも、整体操法、整体指導の中ではとても重要な位置を占めている。

上手に季節に体を適応させていくためには、整体操法で体の変化を促進していくのも一つの方法だが、生活の中でちょっとした工夫をするだけでも全然違ってくる。
それが、足湯だったり、肘湯だったり、蒸しタオル温法だったり、また水を飲むことだったり、お風呂の温度を工夫することだったりする。また、寝るときの布団のチョイスも、季節と体の適応に一役買ったりする。

最近のことを言えば、寝汗を冷やして喉を腫らせている人が多い。3月、4月くらいまでは、冷えると胃腸に来る人が多かった。胃が痛んだり、働かなくなったり、腸にガスが溜まったり、下痢をしたり・・・。
このところは汗を引っ込めて泌尿器系に変動が起こる人が多く、朝に顔が浮腫んでいたり、喉が腫れたり痛んだり、ガラガラ声になったり、中には高熱を発する人もいる。咳は呼吸器の問題だが、喉が腫れるのは泌尿器の変動である。一部呼吸器にまで症状が進んでいる人達もいるが、どちらにしても、原因はほとんどが寝冷えである。

そういう人に訊いてみると、未だに真冬と同じ布団で寝ていたりする。そして、夜中に暑くなって布団を剥いでしまったり、寝汗をかいてそれが冷えたりして、泌尿器の風邪を引いてるのである。
また、寝冷え以外では、このところあちらこちらで入り出した冷房で冷えて、同様な症状を起こしている人もいる。

布団は、春から初夏に向かう時は、早め早めに薄く、または少なくしていった方が良い。その方が、季節の変化に体がついて行きやすい。いつまでも厚い布団、厚い寝間着で寝ていると、体が季節に置いて行かれてしまう。
反対に、秋から冬にかけてだんだん寒くなる時期は、早め早めに布団を厚く、もしくは多くしていく。今度は、その方が季節に体が適っていくのである。

汗の内攻、泌尿器の変動は、体の捻れと一連のものである。今、喉を腫らして風邪様の症状を呈している人は、ほとんど第2・第3腰椎が捻れて硬直している。
そんな症状が何週間も続いて一向に治らないという人も、この体の捻れを調整してしまえば、見る見るうちに回復に向かう。

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