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其の3 運動系の調整ということ (指田)

人間は、動物である。動物である人間は、動くことで要求を果たしていく。

人間が生きているということは、動いている、ということだ。

運動器系を用いて要求を果たしていく人間にとって、動きの停滞は、すなわち生命活動の停滞を意味する。

運動というと、手足や体幹部の動き、― 立つ・座る・歩く・走る・投げる・跳ぶなど ―、つまりは骨格筋の運動が連想されやすい。しかし、人間の生命活動は、もっと広い意味での運動である。

例えば、呼吸も一つの運動である。一般に呼吸器というと、気管・気管支・肺などの器官を指す。これらの器官は、酸素を体内に取り込み二酸化炭素を体外に排出しているが、自力で空気を取り込んだり吐き出したりしているわけではない。息を吸ったり吐いたりするには、胸郭が拡がったり、横隔膜が上下したりする広い範囲の骨格筋の運動が必要である。もっと言えば、呼吸(外呼吸)は、体中が寄せては返す波のように、緊張(吸)と弛緩(呼)を繰り返す全身運動なのである。

また、くしゃみも、咳も、欠伸も、瞬きも身体運動であるし、排尿や排便も広い意味では身体の運動である。心臓の鼓動も、胃や腸の蠕動運動も、血管の拡張・収縮も、生命の営みはまさに運動そのものである。

整体操法は、運動器系の調整である。

これは、人間の生命活動である 「動き」 を改善するという意味であると共に、文字通り 「運動器系」 、すなわち骨格・関節・靭帯・腱、そして骨格筋による身体の運動系に働きかけて、全体の働きの調和をとるということである。

体の様々な働きの異常は、運動系の違和として現われる。整体では、それを特に脊椎及び、その周囲の筋肉の状況で触知する。

頚が回らない、腕が上がらない、膝に痛みがあるなどの、いわゆる身体運動の問題が、脊椎の歪みや硬直と関係しているということは最近では広く知られてきているが、臓器の変動もまた、関連する脊椎の動きに反映する。
例えば、肝臓の働きの変動は、第9胸椎の異常として現われる。脳の血行の状況は、第2頚椎に変化を起こす。
それぞれ対応している椎骨及び、椎側と呼ばれる脊椎外側の筋肉に、いろいろと変化が現われる。硬直したり、弛緩したり、転位したり・・・。感覚も、過敏になったり、鈍麻したり、圧痛が生じたり・・・。

もちろん、異常が現われる運動器は脊椎だけではない。消化器の疲労が下肢の筋肉を硬直させたり、子宮の問題が手首の関節を狂わせたりすることもある。心臓の具合が悪くて、左の腕に痺れが出ることは、一般にもよく知られていることだ。

そして、その異常が現われている運動器系を調整することで、逆に関連する内臓・神経系・内分泌系などの働きを調整することができるのだ。例えば、逆上せや脳貧血など、脳の血行異常は、第2頚椎を調整することで正常に復することができる。胃の収縮による痛みなどは、第11胸椎への押圧刺激で緩和される。また、手首の関節調整で子宮の位置異常(後屈など)を治したり、痔になり易い体の傾向を足の小指を調整することで無くしたりする。

整体では、いつでも 「動き」 に働きかけ、体を調整していく。そして、「動き」 の閊えを改善させることは、すなわち、「気」 の停滞を解除することであり、「要求」 の中断を回復させることである。

それを実現するには、動きの悪い処を一つ一つ見つけて、片っ端から治していくというのでは上手くいかない。ただ悪いところ、硬直しているところを追いかけ追いかけ治しているだけでは、いつも後手後手に回っていることになり、到底相手の体をリードしていくことはできない。

整体操法においては、常に体の変化の半歩先、一歩先を読んで、動きをリードしていかなくてはならない。それは、「気」 を読むということでもあり、体が志向しているところ、すなわち体の 「要求」 を読むということでもある。そこが何より整体の難しい所でもあり、同時に整体の醍醐味でもある。

常に相手の体を先導していくところに、整体の整体たる真面目がある。そして、それが整体操法が、「整体指導」 とも呼ばれる所以なのである。
言語を超えた身体技法という領域において、心と体に働きかける整体の 「指導」。そこで求められるスキルを習得するために重要となるファクターを、整体の世界では、「機」、「度」、「間」、と表現する。技術の中に、その 「機」、「度」、「間」、というものを掴まなければ、形だけは整体でも、ただの体の修理屋になってしまうのだ。

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