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其の10 和風はカラダいっぱいに吹く、、(柳澤)

日本には、四季がある。

気温も湿度も、ぐんぐんやら、うねうねやら、しながら
季節の流れにつき添いながら、
寄せたり引いたりして、暑さや寒さの色をかもす。

風や光の量も、
音や水の近さも、季節の動きそのものとして
動き続ける。

変化してやまない世界にいて
何事も起こらない安定を望むのは
失礼千万な事なのかもしれない、、、。


しかし、人は安寧と平安を望む。



「養生」と云うものは、
20世紀後半にいたっては、
「衛生」と云うものに、
とって変わられてしまったけど、

変転してやまない自然の動きと、
身体の変化と、、、
変幻し換わり続ける
身体と世界の一つながりの「体気象」
とも云うべきものに、
いかに対応し、これに一本の芯となるものを
打ち込んでおくべきかを、
自在に巧妙に、半歩先に
手を打っておく方法論なのであった。


「養生」と云う、季節とともに
生活する方法論を、失ってしまった現在、
季節を読んで、対応しましょうと云う提案は
一般的には、感覚として
判りにくいコトになってしまっているのかもしれない、、、。




野口整体には、風に対する養生法と云うものがある。

四季に応じて、
身体に吹き付けられる風の方向を
論じている養生法である。

四季の身体においては、
湿度、汗と乾きと云うものが
大変重要なファクターとなっている。

汗がどのように、風に吹き付けられ
乾くのか、、
乾燥した時期に、凍えた風が
いかにカラダを脅かすのか、、、
その、吹き付ける、吹き抜ける、
方向の、何に注意すればよいのかを
養生として説いている。



夏は、身体全体が放熱しようと
世界に向けて、開いている。

汗をかき、気化させることで
熱を奪われて、放熱している、、

たっぷり汗をかいた後に
木陰で、そよそよした風に
吹かれるのが心地良いのは
理にかなっているのだ。

この心地よさは、
身体の前面に受けるのが
なおさら心地良い、、。

胸から額から
暑気が吹きとられ、
熱が発散してゆくのが
ことさら、なのである。


夏は、身体の前面に
風を受けるのが養生である。

逆に、知らぬあい間に
背面から風をうけて、
首筋やら、腰やらにかいた汗を
冷やされてしまうコトが
身体を危うくする端緒となる。

知らぬ間と云うのは、
眠っていたり、であるとか
外気温からすれば、異常事態である
エアコンの冷気を
ワゴンセール品に気を取られている隙に
首筋にかいた汗に吹きつけられて
冷やされたりする場合である。


夏は、呼吸器が旺盛にはたらき
胸が開き、身体前面から
どかどか放熱してゆくのが
健康的な生活と云うものなのだ、、



冬は、反対に
北から吹いてくる風を
背中で受ける、、
ごうごうと吹き付ける突風に
背中を押されながら、
吹き飛ばされるのが、
とんでもなく心地良いのは
この理のためである。



湿度も気温も上がる夏季の
過ごし方と云うのは、
汗の処理を、いかにするかと云うのが
養生である。

汗をいかにかくか、
汗を冷やさないかと云うのが、
最重要課題なのである。




「冷え」と云うものには、
入り口がある。

東洋の古典でもある
傷寒論は、この「冷え」と云うものが
どのような経路で身体に入り込んだのか、
それによりどのような「傷寒」を
身体に及ぼしているのかを
緻密に詳細に論じたものであるが、
確かに、「冷え」は、
何処からでも、冷えるモノではないのである。


汗をかき、
風にさらされ、
冷やされる事で
「冷え」てしまう、、、
これは、夏季の基本的な
「冷え」の形態である。

けれど、
半裸に近い状態で、
その辺にごろ寝しても、
何でもない人たちは、何故?
「冷え」ないの、、、。
と、疑問に思う人たちがいる。

確かに、
湿度がちょっと、上がっただけで
いちはやくTシャツ一枚にハーフパンツに
裸足に草履、と
平気で空調のぎんぎん、効いた
鉄筋鉄骨コンクリート造の商業施設に
入ってきたりする人たちがいる。


どうなっているのだ、、、、と。


梅雨の初期であるこの時期、
「冷え」の入り口は
下肢にあり、
膝下のスネにある。

膝頭の下部のすぐ下の
足三里と呼ばれるあたりの向こう脛の外側のクボミと
その反対側の内側のクボミに横断する
水平のラインの口と、
もう一箇処は足首の、外踝クルブシの上のクボミと
その反対側の内踝クルブシの上のクボミに横断する
水平のラインの入り口である。


「冷え」の入り口は、ココには違いないのであるが、
どんな場合にも、入り口になっているのかと云うと
そうでもない、、。

ありゃりゃりゃ、、、どうなっているのだ、、、、と、、。



ためしに
アキレス腱を伸ばすように
つま先を立ててみる、
足首がくの字に曲がるように
足の裏側を伸ばすのである。

すると、前面のスネのあたりに
急激に吸い込んでいる感覚が
生まれる、、、

逆にアキレス腱を縮ませ、
足先をスネと水平に、
向こう脛スネを伸ばすようにすると、
この前面のスネからは、
何かもやもや、発散する感覚がある、、。

この「吸い込み」と「発散」という感覚は、
「体気象」と云うものを
感じ取る上で、実に大事な
体感覚なのである。

これは、自分の身体の実感としても
他者の身体の観相としても
感覚できる気のモニター法である。


意識的に
アキレス腱を伸ばしている訳ではないのに
常に、アキレス腱が張り詰めて緊張状態で
ある人たちは、
この「冷え」の入り口が、
開いている。

吸い込みの気の流れの体勢を
常に取っているのであるから、
冷えは、入り込みやすい。

逆に、アキレス腱は弛み
適度に関節が開いている人たちは
ハーフパンツだろうが短パンだろうが
涼しげなオープンな衣服をまとっても
冷える事は無い、、、
外気に直にさらされた肌からは
ぐんぐん放熱されるのである。


アキレス腱周辺の緊張が抜けない身体は
腰椎1番の椎側も、常に抜けない硬張りを
作っている。

「冷え」が入り込むと、
この硬直したラインが
胸椎11、12番と云う、腰椎のすぐ上の
椎骨のワキの椎側に
上がってゆく、、、。

腰椎1番がこの時、
下がって真下の2番に
くっ付いてしまうと、
胸椎11、12に上がったラインは
椎側の三側と云う処に
入り込み、腹痛を起こし始める。
急激に下したりするのである、、、

逆に、ラインが
一側に入り込むこともある、
腰椎1番が上がったまま飛び出し、
胸椎12番にくっ付いてしまっている場合である。
この場合は、
さらに胸椎の上の方、上胸部に絡んでくるので
また別の冷えの様相を呈する。
「冷え」は、このラインを
昇りながら、肝臓に入り込むこともあるし、
一気に上がって、胸椎1、2番を硬張らせて
肩や腕、首の筋や腱を硬直化して
動きを阻害したりする。



さて、「冷え」の入り口が
開いていないのに、
「冷え」の問題を抱えている身体もある。

これは、
足首などの関節が開きすぎている身体である。

この人たちは、
非常に肌の感覚が鈍い状態に陥っていて
汗をかけない、、!

ゴムのように粘りついた厚い肌をしていて
汗をかけないために
大変に暑がりである、
半裸に近い格好をしていても
涼しげな感じがしないし、
空調をキンキンに、効かせたがる人たちである。

この人たちの「冷え」は、
皮膚や泌尿器系にあらわれる、、、
厳密に言えば、「冷え」そのものではなく、
「汗の内攻」なのであるけれど、
かけない汗のための変動を起こすのである。

この人たちにも、
「冷え」が、入り込むことがある、
別の入り口が開けられたのである、
この場合、冷やされて「冷え」たというより
内攻した汗が冷えを、呼び込んだと云う
感じに近い、、、。

このような冷えは、
血行の問題となる、、
循環器やら血管の変動を起こしやすいのである。


腰椎3番が捻れながら、腰椎4番の力が抜け
引っ込んでいる、、
1番は上がったまま硬張り、椎側に弛んだ一点が
生まれている、、。

汗は、冷えて内攻もするが
かけないことで、内攻もするのだ、
かけない内攻は、つらい、、
泌尿器がフル稼働しても追いつけない、、




身体は、
季節に動いている、、

各々の身体の特徴と癖に応じて
急処となるべき点とラインをつくりながら、
鈍りもするし、活発に活動的であったりもする、、

この時、どのような身体にも
適う、ピッタリとした解決の糸口である
季節の急処と、云うべきものが
発現する。


どういう原理で、このポイントが生まれるのだろう、、、。


整体には、活点と云う
調整点が、身体のあちこちに存在するが、
この活点も、
いつでも、開いているわけではない、、、
見つからない時さえ、あるわけで
これも、入り口が開くように
持ってゆかなければならないのである、
開く必要を、身体に呼びかけないと
いけないのである。



季節の急処は、
この呼びかけ口を
身体そのものが、気象を先取って
用意したものなのだろうか、、、、、。

急処が何故、生まれるのか、、
どうして動くのか、を
究明するのは、また次の機会に、
と云うことになる、、、、、、。








、、、、あゝ

南からまた西南から
和風は河谷いっぱいに吹いて
汗にまみれたシャツも乾けば
熱した額やまぶたも冷える、、、、、、。








さて、
白山治療院の指田さんの、的確で詳細な解説のおかげで
私のつたない言葉足らずの文が、毎回見事に完成されている。

うーん、私が脱帽なのである、、、。

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