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其の11 汗の内攻、夏の冷え・・・(指田)

前回は気法会サイド・其の8を評して、いよいよ柳澤先生が本領を発揮しつつある内容だと書いたが、季よみ通信 其の10 和風はカラダいっぱいに吹く、、 では、まさに柳澤先生の本領が本格的に発揮されている。

   “ 冷えの入り口・・・・ ”

       “ 「吸い込み」と「発散」・・・・ ”

            “ 「体気象」と云うもの・・・・ ”

ついに、身体気法の森へと足を踏み入れて(誘い込まれて?)しまった、という感がある。
さてさて、この深遠な身体気法の世界に、何を手がかりに、何を羅針盤として進んでいったらよいものか・・・。

日本には、いろいろな風が吹く。
春嵐、薫風、凱風、青嵐、真風、山背、野分、風巻、雁渡し、空っ風、玉風、木枯らし、颪、鬼北・・・・。
和風とは、「やさしい風」、「穏やかな風」 の意である、ともいう。

賢治の感じた和風は、まさに “ カラダいっぱいに ” 吹いたことで、同時に河谷いっぱいに吹き、稲田をわたり、栗の葉をかゞやかしたことを、それがまるで我が身に吹いたのと同じように感じさせたのだろう。
ただ単に全身に風を受けただけでは、 “ カラダいっぱいに ” 風を受けたことにはならない。夏の風をカラダいっぱいに感じるには、脇が開き、胸郭がゆるみ開放している必要がある。脇が閉じ、胸が固まっていては、夏の風はカラダを十分に吹き抜けてくれない。
今、カラダいっぱいに風を感じられる体の感性を持った人が、果たしてどれだけいるだろうか・・・。

さて、“ 風に対する養生法 ” である。

野口整体では、汗かく季節、夏の風は前から受けよ、と言う。これは、汗をかく季節は頚や背中など、背面から風を受けると汗が内攻しやすいからである。

“ 東洋の古典でもある傷寒論・・・” が出てきたが、これは中国の長江(揚子江)以南の高温多湿の地域で成立したもので、専ら急性病に対処するための方法が説かれた漢方に於いて亀鑑とされる書である。
傷寒とは、ただ単に 「寒邪」 によって体が傷つけられるという意味でなく、「風邪(ふうじゃ)」 が寒邪を伴った、「風寒の邪」 によって体表から冒された病状について説かれている。
漢方的には、寒邪は重いもので体の下部を冒すのだが、軽い風邪が伴うことで体の上部を冒すのである。
また、中国医学に於ける漢方(湯液)に対するもう一方の雄、鍼灸の世界では、「風門」 という上背部の経穴(ツボ)から 「風邪(ふうじゃ)」 が侵入するとしている。このツボは、第2胸椎棘突起下の両外側1寸半にある。整体的に言えば、第3胸椎二側に当たるだろうか。(二側は、目的の棘突起より少し上方になる)
そして、「風門」 の主治は、咳嗽・発熱・頭痛・悪寒・頚部の強ばり・腰背部痛などである。まさに、汗の内攻によく見られる症状ということになる。

日本でも、中国でも、世界中どこでも、夏の風は背中で受けてはいけないのである。
更に言えば、体の片側からだけ風を受けるのも良くない。その側だけが、偏って硬直してしまうからだ。

そしてまた整体では、冬は前からの風は避けよ、と言う。冬の冷たい風を前から受けると心臓に悪影響があるからである。

野口整体では、汗の内攻ということをうるさく言う。それだけ、汗を冷やして引っ込めたことによって体を損なうことが多いからだ。
この季節、急性病的症状を呈するものには、多かれ少なかれ汗の内攻が絡んでいる。そして、その症状は多岐にわたる。

体が重い、だるいから始まって、発熱したり、下痢をしたり、めまいが起こったり、頭痛が続いたり・・・。

それ以外にも、眼の奥が痛い、視力が急に低下する、耳が痛い、歯痛、咳が出る、のどが痛い、頚や肩がこる、筋肉や関節が痛む、足の筋肉がつる、体が強張る、浮腫む、お腹が張る(ガスがたまる)、妙に眠くなる、血圧が急に高くなる・低くなる等々・・・。

また、ときにはリウマチ様の関節の痛みや、激しい神経痛が起こったり、急に尿が出なくなったり、場合によっては心悸亢進、不整脈など心臓の変動を引き起こすこともある。

汗の内攻から急激に腸にガスが溜まり、それが胸腔を押し上げて狭心症的な症状を起こし、救急車で病院に搬送される人が毎年かなりの数いるという。

時代劇などで、「持病のしゃくが・・・」 というシーンがよくある。胸部や腹部が急に激しく痛むことで、いわゆる差し込みであるが、現代医学的には、胆石だとか胃けいれんだとか、また十二指腸潰瘍だなどとも言われているようだ。
私は、TVで 「持病のしゃく・・・」 が出る度、ああ、それはきっと汗の内攻ですよ、と取り敢えず足湯を勧めたくなる。まずは足湯をしてご覧なさい、と・・・。

汗の内攻によっていろいろな症状が起こっても、まさか汗が冷えたくらいで、そうなっているとは思わないから、慌てて病院に駆け込むことになる。そして、いろいろな病名を付けられて、いろいろな薬を処方されることになる。果ては、緊急手術なんていうことも、あるかも知れない。
消化器科の症状だろうが、循環器科の症状だろうが、泌尿器科、整形外科、耳鼻科、歯医者の領域の症状だろうが、汗が冷えて起こっているものは、汗の内攻を解消する処置をすればよいのであるが・・・。

最近は、熱は無闇に下げてはいけないとか、下痢は止めない方が良い場合もあるなど、整体の常識が医学の世界でも言われるようになってきているらしい。
「汗の内攻」 も、現代医学の常識となる日が来ることを切に願う。

もちろん、暑さに汗ばむ季節に風を受けて涼を取ることが悪いわけではない。また、冬の寒風が、実はそれほど体を壊すわけではない。
まさに、“ その、吹き付ける、吹き抜ける、方向の、何に注意すればよいのか・・・” を知ってさえいればよいのである。

夏の風を前から受けること、冬の風を背中に受けることに、つまりは体に風を受けることに 「快」 を見出し、肯定的に捉えているところは、いかにも柳澤先生らしい。
先生のカラダにも、いっぱいに風が吹いているのだろう。

さて、汗が内攻すると第5胸椎が硬直してくる。第5胸椎は、発汗の中枢である。その第5胸椎が硬直して動きを失うと、今度は引っ込んだ汗が出なくなってしまう。
整体では、このとき悪寒の中枢となっている第8胸椎と発汗中枢の第5胸椎に愉気をするというのがセオリーになっている。第5の硬直が弛んで汗が出てくれば、内攻が解消されるということだ。
手の平の中心に第8胸椎、指先あたりに第5胸椎が来るように手を当てて愉気するのが標準的なやり方である。
内攻が更に進むと、呼吸器・泌尿器関連の椎骨にも異常が及ぶ。それが本格的になると、第5胸椎に愉気をしただけでは、なかなか内攻は解消しない。多くは発熱を伴う変動を経て、本格的に汗が出切る必要がある。

汗の内攻は、言わば 「夏の冷え」 である。本格的に寒い秋・冬とは、また違った種類の 「冷え」 なのである。
蒸し暑い夜に寝汗をかいて、明け方急に気温が下がりヒンヤリと体が冷たくなってしまったり、夕方急に風が冷たくなって、うっすらかいていた汗が急に冷えたりする。
どういうシチュエーションだったとしても、やはりそこには 「汗」 の問題が絡んでくるのが夏の冷えなのだ。

夏の冷えでも、「冷え」 であるからには、当然 「冷えの急処」 は有効である。体が冷えの影響を受けると、足の甲の第3・第4中足骨間が狭くなり、ときに硬結が生じる。ここを押し広げるように押さえて愉気すると、冷えによる悪影響が抜けていく。
夏の冷え = 汗の内攻にも、足湯・脚湯は効果を上げるが、その前に足の甲の冷えの急処を押さえておけば、なお効果は高い。

また、頚上と呼ばれる頚と後頭部の境目、いわゆる盆の窪と呼ばれる部分を蒸しタオルで8~10分程度温めるというのも夏の冷えには有効である。足湯・脚湯と同様に、引っ込んで内攻した汗を、再び出させる効果がある。
ともかく、引っ込んだ汗は、もう一度出させるのが一番よい。

・・・ 当然ではあるが、その汗をまた冷やして引っ込めてはいけない。

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