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其の15 開く体、夏の操法(指田)

季よみ通信 其の13 では、体が整っていることを端的に表すものとして、腹部の三つの 「処」 について書いた。

ちなみに野口整体では、体の状況を表す身体上のポイントのことを 「処」 という。処は体の働きの状況を示すと共に、その働きを調整できるポイントでもある。いわゆる急処であり、「調律点」 とも呼ばれる。

さて、腹部第1・第2・第3調律点であるが、それぞれ 「虚」・「冲」・「実」 であることが 「順」 である。

この 「虚」・「冲」・「実」 というのは、それぞれの処の 「気の虚実」 である。処を整圧しながら、気の虚実を読むのである。

「気の虚実」 といっても始めは掴み所がないので、まずは処を触っての弾力で観ることから始める。

「虚」 は、すぼめた掌の中心の柔らかさ、「冲」 は、掌の手首に近い手根部の弾力、「実」 は、手の甲の硬さ、あるいは力を入れた上腕の力こぶの弾力などに例えられる。
また、 「虚」 は、息を吸っている時でも吐いている時でも力が抜けて柔らかい。「冲」 は、息を吸っている時は力が集まって硬いが、吐いている時は弛んで柔らかい。「実」 は、吸っている時も吐いている時も、力が充実して弾力ある硬さがある。

腹部第1が 「逆」 のときは、胸部を操法する。
腹部第2が 「逆」 のときは、腰部と側腹の操法をする。
腹部第3が 「逆」 のときは、頭部の操法をする。

といった、それぞれの処の 「逆」 に対処する方法などもあるが、基本的には全体のバランスの中で腹部第1・第2・第3調律点がそれぞれ順となるように操法を組み立てていく。

腹部にはその他に、左季肋部に腹部第4調律点、右季肋部に腹部第5調律点がある。それぞれ、感情の閊え、排泄の閊えを示す処である。
第4は心の閊え、第5は体の閊えと言ってもいいかもしれない。

腹部の調律点は五つだが、それ以外に重要な腹部の処として、側腹と鼠径部がある。

側腹は、主に泌尿器及び体の捻れ、第3腰椎の状況を反映する。ここは非常に守備範囲の広い急処である。
泌尿器に関係して、浮腫みや梅雨時のだるさなどにも使うし、呼吸が浅い、高血圧、腰痛や悪阻などにも急処として用いられる。

鼠径部は、一応腹部の急処ではあるが、腸骨の前側・内側の操法と考えても良い。

ここ2週間ほど、鼠径部の操法を行なう際、整圧をいつもよりも深く取ることが多くなった。この鼠径部内側の急処は、整体操法制定に携わった野中豪作氏の野中操法の第1健康線に相当するが、まさに野中操法的に深く四指を差し入れて外へ向かって柔らかく整圧している。

“ 夏の身体は、開いている。骨盤が開き、皮膚が弛み・・・”、である。
夏の体は、思いっきり開いているのが本当なのだ。

夏の開いて弛んだ体になっていくために、鼠径部の操法も深く取って開き弛めることを誘導する刺激が、人によっては必要であり、今の体に適っているということだろう。
こういうことは頭で考えてそうしているのではなく、ある時期になると自然と体がそういう風に動き出すのである。

操法の途中で、ここを押さえてみたらどうか、と頭で考えても手の方が動かない、ということがある。そういうときは、頭よりも手を信頼した方が良い。体と頭が対立したら、大抵体の方が正しい。
というより整体に於いては、そうなるように、「体 (=潜在意識)」、を訓練していくのだ。
その訓練の基礎の基礎は、活元運動と合掌行気法である。

夏の操法は、若干短くなる。その方が、夏の体には合っているのだ。

風邪のときや花粉症の症状が出ているときも、操法は短めにした方が良い。間延びしてダラダラとやると、かえって症状が悪化したり経過が長引いたりする。

そもそも、夏の体は弛んでいるし、弛みやすいので、操法をする側からすると楽なのである。冬にはじっくりと感応をはかって愉気をしたり、あれこれ手順を踏んで弛めたりするものが、チョイチョイと刺激するだけで事足りたりることも多い。
それもまた、操法の時間が短くなる一つの理由ではある。

短いと言っても半分になるわけではないが、その若干短いというところに、弛みの中に一つ冗長とならない纏まりのようなものを求めるのである。

パン作りでも、過発酵させると生地がだれてしまう。夏は当然暑いので、発酵温度が高すぎたり、発酵時間が長すぎると、発酵過剰で生地がだれてしまうのだ。

夏の体に対する操法も、だれさせないように、程良い時間で纏めるのが大事なのである。

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