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其の25 冬の体 引き締まりの季節(指田)

整体の世界では、冬は上下型体癖的な季節であるとされている。上下型体癖とは、エネルギーが大脳の働きに昇華し易い体のタイプのことをいう。

体癖というものは、生まれ持った心身の感受性の傾向のことで、上下型・左右型・前後型・捻れ型・開閉型の5つに分類される。ここでは詳しくは述べないが、一人の人間の持つ体癖的傾向は、その現れ方の濃淡に変化はあっても、基本的には終生変わることは無い。

では、冬という季節が、上下型体癖的な季節だということはどういうことか。

冬は、一年を通して、最も頭の働きが高まる季節なのだ。

体のエネルギーが精神的な働きに転換しやすいとでも言おうか、精神活動が活発になり、精神による創造力が最も高まる時期なのである。そして、それはまさに、上下型1種体癖の特徴なのだ。

上下型的な傾向の薄い人でも、冬という季節は、その人なりに創造的な頭の働きが冴えてくる。

こういう季節の移り変わりに対応して、心身の体癖的な傾向が変化することを、「体勢」 が変わるという。
体癖は、個人の中にある特性のようなもので、基本的には生まれてから死ぬまで変わることはない。
それに対して 「体勢」 は、個人の固有の体癖的傾向とは別に万人の心身において、季節に対応して変化したり、バイオリズムで日々移り変わったりしている。

この体癖というものの元になっているとも考え得る 「体勢」 の変化という現象の解明は、野口先生の高弟であった柳田先生という方の一生を通じた研究の成果であると聞いてる。

さて、上下型的体勢となる冬は、思考が冴え、精神の働きが高まる季節であるが、逆に言えば、その系統が働き過ぎになりやすい季節でもある。そして、「引き締まり」 の季節である冬は、やはり行きすぎれば、過剰に緊張した状態にも陥りやすい。

晩秋以降、空気が冷たくなると、その冷たい風にさらされて眼が緊張しやすい。そして、だんだんと空気が乾燥してくるので、乾いて水分が不足しがちな体の中で、最も潤っていなければいけない眼が、どうしても乾いてくる。

眼の過剰緊張、乾燥による疲労しやすい状態は、脳の緊張を引き起こす。眼は、脳の出先機関であり、眼が疲れると脳も疲れ、眼が過敏になると脳も緊張が解けにくくなる。すなわち、リラックスしてポカンと弛むことが難しくなるのだ。

眼の緊張 ・疲労を取るには、蒸しタオルで温めるのがよい。眼の蒸しタオルは、眼の緊張 ・疲れを取ると同時に、頭の緊張をも弛ませてくれる。

蒸しタオルは、普通は家庭にタオルウォーマーなどはないので、お湯に浸けて絞ったものでよい。それも面倒だという人は、レンジで温めたものでもかまわないが、お湯で絞った方がなぜか気持ちがよいし効果も上がるようである。
熱い湯に浸けて絞る場合は、細長くたたんだタオルの両端を持って、中央部分をお湯に浸して絞るとよい。炊事用のゴム手袋などをすれば安全である。
また、レンジで温める場合は、表面よりも中心部の方が高温になっている場合があるので、注意が必要。

ホカホカと温かいタオルを眼に当てる。4~5分もすると冷めるので、温め直してまた当てる。これを2~3回程度くり返す。
よく、冷めない温パックのようなものはどうですか、と訊かれるが、それはあまりお奨めしない。だんだん冷めるという温度の変化と、温め直す間のインターバルがあるということが、実は眼を温める上での重要なポイントなのである。

同じ理由で、蒸しタオルをビニール袋に入れて冷めにくくすることや、いくつも蒸しタオルをつくっておいて、冷めたらすぐ用意しておいたものと取り替えるのもよい方法ではない。いちいち手間をかけて温め直すのが、眼の温法としては優れているのである。
これは、試しに比べてみるとよくわかる。一度くらい、やり比べてみるのもよい。人に訊いたのと、実体験では、納得度合いが違う。
お湯に浸けて絞ったタオルとレンジでチンしたタオル。また、両眼一遍に温めるのと、片方ずつ温めるのも、比べてみると面白い。

それから、眼は強く圧迫してはいけないところなので、蒸しタオルを当てるときも、強く押しつけたりせずに、ふんわりとやさしく当てる。
ちょっと仰向いておこなうと、頭の緊張が抜けやすくてよい。仰向けに寝てやってもよいのだが、つい気持ち良すぎて寝てしまうと、冷えた濡れタオルを眼に当て続けることになるので要注意。

冬は、頭が緊張し、眼が疲れやすい季節ではあるが、眼も頭もどんどん使う方がよい。どんどん使って、よく休める。使って上手に休めることで、頭も眼もどんどんよくなっていく。
これは、体のどこでも同じである。ただし、それに適した季節というものはある。冬は、頭を鍛える季節なのだ。

眼も冷たい空気にさらされ緊張し、乾燥によってドライアイにもなりやすいが、同じことは全身にも起こっている。
冬の体にとって影響が大きいのは、なんと言っても 「冷え」 と 「乾き」 である。

整体で、「体が冷えています」、と言う場合、それは冷えたことによって体に何らかの変化が生じていることを見て取っている。
足の甲の第3・第4中足骨の間が狭まっている。第1腰椎が突出し、第4腰椎が引っ込んでいる。骨盤が縮んで、固まっている。第3腰椎が捻れている、などなど・・・。
骨格や筋肉、皮膚などに 「冷え」 たことの影響が及び、その状態が固定化してしてしまっていることを問題にしているのである。今、手足を触って、冷たいか温かいかということを言っているわけではない。
言ってみれば、「風呂上がりで全身ポカポカしていても、『冷えている』 体」、というものがあるわけである。

その 「冷えた体」 を回復させる、すなわち冷えを抜く方法として優れているのは、足湯である。足の甲の第3・第4中足骨間= 「冷えの急処」 を押さえて弛めた後、足湯をする。

足湯のちょっとしたまとめ

また、朝風呂に入るのも効果的である。

冬は寒いので 「冷え」 には気をつける人は多いけれど、「乾き」 に関しては無頓着な人が多い。
人間は、感覚的にも冷えるということはわかりやすいが、体が乾いてくるということに対しては鈍いのだ。暑いときの発汗による水分不足はまだ感じるのだが、冬の空気の乾燥による体の乾きにはとんと鈍い。
しかし、感覚は鈍いのだが、その影響の方はしっかり体に現れる。

皮膚がかゆい、筋肉がこわばる、節々が痛い、目が乾く、空咳が出る、胃が荒れる、便通が悪くなる、体がむくむ、小便が近くなる、などなど。

冬の体を取り巻く環境は、ひどく乾燥してる。体の水分は、皮膚からも飛んでいくが、呼吸からも排出されている。気をつけて水分を補給しないと、カラカラの干物のようになってしまう。

乾いているのだから、当然水分を取るのがいい。しかし、水分なら何でもいいかといえば、それがそうでもない。
水分と言っても、お茶や紅茶などは、たくさん飲んでも体が潤わない。利尿作用が強いからであると思われるが、ともかく体を素通りしてしまう。コーヒーなどは、かえって体の渇きを助長する。
お酒はもっと乾く。お酒を飲む人は、よほど気をつけて乾き対策をしないとドンドン体が干からびて、老けていってしまう。お酒を飲むときは、一緒に水を飲むといい。

体が整体になってくると、乾きにも敏感になってくるが、まずは知識として「秋から冬は体が乾く」ということを知って、水分補給に気をつけるのがいいだろう。
潤っている状態が分からなければ、乾いている状態も分かりにくいのだから、ともかく水を飲んでみることから始めてみて欲しい。潤ってくると、体が乾いている状態の不快な感じが分かってくる。

秋口から初冬ぐらいまでは、スープや味噌汁、蕎麦、うどん、雑炊など、塩気のある温かい水分も吸収がよい。
しかし、冬も本格的に寒くなると、なんと言っても 「水」 がいい。白湯や湯冷ましではなく、生きた水を飲む。それが、冬の健康法となる。

寒いときに水を飲むと体が冷えないか、と訊かれることがあるが、この時期体が整っている人は、冷たいものがおいしく感じる。そういう感じの無い人は、体の引き締まりが足りていない。もちろん過剰な緊張はよくはないが、冬の体は引き締まりがなくてはいけない。

引き締まりの足りないということは、十分に冬の体になっていないということである。そういうときは、下半身をよく温めると、冬の体になってくる。
足湯も良いし、風呂の入り方で工夫するのも良い。そして、秋から冬になるときは、遠慮せずにどんどん暖かくして眠ることである。それが、冬の体への移行をスムーズにする。

さて、冬の体について書いてきたが、実はもうすぐ立春というこの時期、すでに体は春に向けて変化し始めている。
東京では、例年1月の10日頃には、はじめの春の芽吹きがある。ある朝起きると、体の中に春の気配を感じる。
そして、寒さもますます厳しい1月の下旬になると、体にはっきりと春の 「開き」 が感じられる日が来る。
陰極まれば陽となる、というが、寒さの極みに至ると同時に、その中に春の陽が生まれているのである。

 

 

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