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November 2004

達人の咀嚼?!

前回、片噛み解消法で顎を大きく動かしてものを噛むといいと書いた。最近の日本人は、昔に比べて硬いものを食べなくなったので、顎の動かし方も自然と小さくなってきているのだろう。そのせいで、最近の若者は顎の発達も悪くなってきているともいわれている。顎の発達が悪くなると、歯並びも悪くなる。

そして、歯の噛み合わせが悪いと筋力も低下する。ウエイトリフティングなどのパワー系の競技ではその影響は顕著だそうだ。マウスガードやテンプレート(奥歯で噛みしめる形の器具)を使い噛み合わせを調節すると、筋力や集中力がアップして競技能力が高くなるという。また、射撃競技などでも、体の揺れが軽減して標的が狙いやすくなるそうだ。

以前どこかで、「身体能力に優れた人は、ものを食べるときに顎を大きく動かしている」、という内容のコラムを読んだことがある。そのコラムによると、メジャーリーグで活躍中のイチロー選手は、こめかみまで大きく動くぐらい顎をダイナミックに動かして食事をするらしい。

私が知っている中で最も顎を大きく使って咀嚼されていた方は、武術家の黒田鉄山師範である。そして、私が実際に目にしたことのある中で、最も身体操作能力に秀でた方でもある。
黒田先生は、駒川改心流剣術・民弥流居合術・四心多久間流柔術など日本古流武術5流儀の宗家でいらっしゃる。一般の方には馴染みが薄いかもしれないが、古武術界では平成の英傑と呼ばれる方で、その動きのすばらしさは、「生きた奇跡」といっても過言ではない。
私は以前、黒田鉄山先生の道場に1年半ほど通わせていただいていたことがある。黒田先生は、まさにこめかみまで動かしながら、大きく咀嚼されていた。こめかみが目立つほど動くということは、大きく動かしているというだけではなく、しっかりと噛んでいるということでもある。

イチロー、そして黒田先生・・・。しっかりと物を噛む能力があるということは、身体運動の達人たる一つの条件なのかもしれない。
そういえば、堺正章も「かくし芸」の達人であった。

さらに簡単!片噛み解消法。

前回に引き続き、今回も食べ方に関するお話を一つ。今回は、「片噛み」の解消法について。

食べるときに、左右どちらか片側ばかりで噛む癖があると、だんだんと顔の形が歪んでくる。目の大きさに左右差が生じたり、どちらかの頬が縮んだり、鼻筋が曲がったり、歯が片減りしたりする。
片噛みが常習になると、咀嚼筋を始めとする顔の筋肉がアンバランスになるのだ。そして、筋肉だけでなく顔の骨格も歪んでくる。この骨格が歪むというのは顎関節だけの問題ではなく、頭蓋骨自体が歪んでくるのである。
頭蓋骨は、一つの大きな骨のように思われている方もいるかもしれないが、実は23個もの骨が組み合わさってできている。ガイコツの絵を描くときのギザギザが、それらの骨のつなぎ目で縫合部という。いつも左右の同じ側だけで物を噛んでいると、頭蓋骨の骨組みが、だんだんと歪んでくる。
最近では、その影響が背骨に及んで、頭痛や肩こり、腰痛が起きたりすることが、テレビの健康番組などでも話題にされている。また、医学博士・西原克成氏によって、片噛みが免疫力の低下を招くことも指摘されている。

片噛みが起こる原因は、いろいろある。虫歯になって痛い側で噛まないようにしているうちに癖になってしまったり、腰椎や骨盤の仙腸関節、股関節、足首などに歪みがあり、それが片噛みの癖と関係しているということもある。うつ伏せ寝や横向き寝など、寝相が原因で顔の骨格(及び全身の骨格)が歪み、そのために片噛みが起こるという説もある。
虫歯の場合などは別として、片噛みが起こることは生まれ持った個人的な運動習性に端を発すると考えられる。整体ではこの個々人の体の運動の癖を「体癖」呼んでいる。この体癖によって、体の重心の左右偏りなども決まってきて、噛みやすい側も決定される。寝相が片噛みの原因だとしても、寝相自体が体癖的な現象ともいえる。

今回は、そういう話は脇に置いておいて、とりあえず片噛みだけを何とかしてしまう方法をご紹介する。それは、大きく顎(あご)を動かして物を噛むということ。
大きく顎を動かして、もぐもぐと物を噛むと、口内の食物を舌が自動的に右に左にと移動させる。舌にはもともと、そういう機能が備わっているのだ。大きく顎を動かして食べると、逆に片側だけで食べる方が難しい。
コツは、とにかく大きく顎を動かすこと。始めのうちは、少し大げさなぐらい動かすといい。咀嚼に会わせて、こめかみが動くのがわかるくらいに大きく噛む。

以前、「発掘!あるある大辞典」という番組で、顔の歪み(片噛み)のことを特集したときがあった。そのとき、ゲストの誰もが左右どちらか片側で噛んでいた中で、司会の堺正章だけが左右バランスよく噛んでいたが、彼の顎もやはり大きく動いていた。

片噛みの癖があるかどうかということは、普通はあまり自覚がないものなので、一度チェックしてみてはいかがだろうか。もし、片噛みの傾向があるようなら、大きく顎を動かすことをお試しあれ。ただ、慣れないうちは舌を噛みやすいのでご注意を。

簡単!食べ過ぎ防止法。

以前、「整体」であれば、食べたいものを食べたいだけ食べるのがいいと書いた。心と体が自然な状態、調和のとれた状態にあるとき、人間は食べ過ぎるということはほとんどない。本来、体の要求はいつも正しい。

・・・・・のだが、「現実問題、今食べ過ぎを何とかしたい」という人も多いと思う。そこで、今回は食べ過ぎないための実用的なテクニックについて書いてみたい。テクニックといっても難しいことではなく、知っていれば誰でもできるという程度のものである。それは、「姿勢を正して食べる」ということだ。

よく、「ゆっくり食べると、食べている間に満腹中枢に刺激が行って食べ過ぎない」といわれる。それはその通りなのだが、実は食べ過ぎてしまう人にとっては、ゆっくり食べるということ自体が難しい。そんなとき、姿勢を正して食べるというのは、食べる速度をゆっくりにする極めて有効なテクニックである。
昔から、お膳に顔を近づけて食べることは「犬食い」といって不作法なこととされているが、この「犬食い」をすると、どうしても「勢い」で食べてしまう。背中を丸めて、お膳に覆い被さるように食べると、食べる速度も速くなり、満腹感を感じるまもなく、気がついたときには食べ過ぎてしまっているということになる。
背筋を伸ばし姿勢を正して、お膳(食べ物)から顔を遠く離して食べると、「勢い」で食べることがなくなる。たったそれだけのことだが、ゆったり落ち着いて食べることができる。勢い込んで食べてしまう癖がある人は、ぜひ試してみていただきたい。

そして、姿勢を正して食べるということにはもう一つ意味がある。人間は物を食べて胃が拡張すると背中が張ってくる。整体的にいえば、第7胸椎から第9胸椎あたりの筋肉が張ってくる。こうなると、背中を真っ直ぐに立てているのが辛くなり、腰が抜けて背中を丸くした姿勢が楽になってくる。しかし、そういう姿勢が楽になっているときは、実はもう食べ過ぎているのである。「腹一杯」というが、お腹が苦しくなる以前に背中が張ってくるのだ。
食事中、姿勢を正しく保っていられる間は、食べ過ぎていないと思っていい。背中を丸くしたくなってきたら、そこで食べるのをやめれば、食べ過ぎにはならない。

「姿勢を正して」といっても、背中の筋肉を緊張させて、いわゆる「気をつけ」の姿勢を取るということではない。背筋は伸ばすが、肩や背中の力を抜きリラックスした状態にする。これは、正座をした場合は自然とそうなるのだが、最近は椅子で食事をすることが多くなったので、正座に比べて腰が伸びにくく肩の力が抜けにくい。楽に背筋を伸ばすには、自分なりに多少の工夫が必要かもしれない。

そもそも、背中を伸ばすことが辛いという人は、長期にわたって食べすぎが続いている人である。それなりに伸ばして、チャレンジしていただきたい。

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