整体操法制定委員会.2
整体操法制定委員会の委員の顔ぶれを見てみると、オステオパシー ・カイロプラクティック ・スポンディロセラピーなどのアメリカ発祥の手技療法をおこなっていた人が意外と多いことに気づく。これらの療法は、大まかにいうと脊椎を中心とした人体の関節を調整することで全身の機能を改善し健康を保つことを目指している。(脊椎も椎骨が関節を作って連なっている)
整体操法の脊椎操法は、これら舶来の療法の影響を多分に受けている。オステオパシーやカイロプラクティックなどが入ってくる以前、日本の手技療法といえば、ほとんどが漢方理論によるものだった。背骨やその周囲に働きかけるとしても、経絡(体内を流れる「気」の経路)及び経穴(いわゆるツボ)に対する働きかけが中心で、脊椎そのものの可動性や弾力を調整するという発想は、あったとしてもごく少数派だったと思われる。
整体操法が制定される少し前から、これらアメリカ式の脊椎調整法が日本の手技療法の中に少しずつ取り入れられてきた。整体“言”始めでも書いたが、オステオパシーは大正年間に山田信一氏によって日本に紹介されている。山田氏も制定委員のひとりだ。
カイロプラクティックが日本に入ってきたのは、オステオパシーよりも少し遅いらしいが、今ではオステオパシーよりも一般的に知名度が高いようだ。ここ十数年ほどでカイロプラクティックという正式名称を名乗るところが増えてきたが、それ以前は 「整体」 と名乗ってカイロを施術しているところが多く、いろいろと混乱を招いていた。
スポンディロセラピーは、脊椎反射療法と和訳され、“あんま・マッサージ・指圧師”の国家資格を取得するための教科書にも、指圧に影響を与えたものとしてオステ、カイロと共に名前を挙げられている。按摩は奈良 ・平安時代からおこなわれてきたが、指圧はこれら外来の手技療法の影響を受け近代になって成立したものだ。
スポンディロセラピーは脊椎の棘突起やその両側の皮膚 ・筋肉に叩打、押圧、振動法、温熱 ・冷却などの刺激をおこない脊髄反射中枢に刺激を与え治癒をうながすというものだったようだが、現在日本でこの療法をおこなっているところはとても少ない。
整体操法において、脊椎の観察と操法はとても重視される。しかし、そのアプローチの仕方は、影響を受けたと思われるオステオパシーやカイロプラクティックとはだいぶ異なったものとなっている。オステやカイロは、大まかにいえば、背骨の転位(ズレ)が体の機能を不全にさせると考える。そのため、まずはその脊椎の異常を正すことに重点が置かれる。背骨の不自然を正せば、自動的に体の機能は改善するという考え方だ。
整体法では、骨が曲がったり歪んだりしているのを見つけても、それをすぐさま元の位置に戻そうとはしない。その歪みやズレがなぜ起こるのかということをまず考える。目を酷使しても、体が冷えても、お酒を飲み過ぎても脊椎は可動性を失ったり転位したりする。その原因となる生活の仕方、体の使い方の方を正すことを考えずに、とりあえず骨の歪みを真っ直ぐにしてしまおうとは考えない。
目を蒸しタオルで温めたり、足湯をしたり、飲み過ぎないように注意すれば元に戻るような背骨の変化は、直接背骨を矯正しない方が体にとっては良い。それだけでは自然な状態に戻れなくなってしまっている異常であったら、その時はじめて脊椎に働きかける。それも、力で矯正するのではなく、自然に治っていかない「感覚 ・働きが鈍った状態」を、自力で戻る力を発揮するように「敏感な状態」(過敏ではない)にしていくことに尽きる。
なるべく自分の体の中の力で治っていくように手伝っていくのが整体式。そうしていくことで、体が自然治癒力を発揮するように育てていく。手伝い過ぎると体は自分の力を発揮しなくなってしまう。また、場合によっては体にとってかえって負担になる。骨の歪みを矯正技術で外部の力で治すというのは、整体法では最後の最後の手段となる。
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