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October 2010

ちくま文庫

たまに、「野口整体に関する本で、お奨めのものはありますか?」 と訊かれることがある。
その人が野口整体にどういうことを求めているかでお奨めの本も変わるのだが、一応入手しやすく、また基本を押さえるという意味で野口晴哉先生の 「整体入門」 を勧めることが多い。

数年前に野口先生の 「整体入門」ちくま文庫から復刻された。これがかなりのベストセラーになったそうである。その後、「風邪の効用」 も出て、こちらもかなり評判がよかったようだ。
柳の下にはまだまだ泥鰌がいるということなのか、その後ちくま文庫から野口整体関連の本が続々出版された。

野口氏の令夫人、野口昭子著 「回想の野口晴哉」 - この本は、野口先生の幼少から晩年までの様々なエピソードを綴った伝記的なエッセイ。全生社から出ていた 「朴歯の下駄」 の文庫化である。

それ以外には・・・

「東洋医学セルフケア365日」 長谷川淨潤著 

「整体から見る気と身体」 片山洋次郎著 

「整体。共鳴から始まる」 片山洋次郎著 

「自分にやさしくする整体」 片山洋次郎著 

「おきらく整体生活」 奥谷まゆみ著 

「身体をひらく整体」 河野智聖著 

「野生の哲学」 永沢哲著 

「整体的生活術」 三枝誠著 

「大和なでしこ整体読本」 三枝誠著 

「身体は何でも知っている」 三枝龍生著 


ざっと見ても、これぐらいの整体関連の本がちくま文庫から出ているようだ。もしかすると、他にもあるかも知れない。
文庫化されたものは、整体初心者にとっても興味が持ちやすく理解されやすい内容のものが多いように思う。筑摩書房さんのおかげで、これまであまり流出することのなかった野口整体の情報が、広く一般の人にも手軽に入手できるようになった。このことは、整体文化の裾野を広げる意味で、非常に歓迎すべきことだと思う。
そこから、もっと深く学んでいきたい人は、それぞれ自分に合った団体なり先生なりを探して学んでいけばよいだろう。

最後になったが、最近 「身体感覚を磨く12ヶ月」(松田恵美子著)という本がちくま文庫から出ているのを見つけた。本文にも著者のプロフィールにも整体のセの字も出てこないが、内容はほぼまるまる野口整体である。
季節と身体のかかわりを解き明かすのは、整体の真骨頂である。この本には、旧暦の暦に合わせて節句や祭事・行事などを紹介しながら、季節の変化と身体の変化についてとても分かりやすく書かれていた。これから整体のことを知っていきたいという人にはお奨めしたい一冊である。

掌心発現

前回、指の付け根をつまんで愉気して手の感覚を敏感に保つ方法を紹介した。
上手に行うと直後から手の感覚が変化するが、その場でスッキリと変わらなくても2日くらいして、「そういえば・・・」 と手に注意を向けてみると、一皮むけたように新鮮な感覚が戻っていることもある。

さて、それぞれの指が体のどこと関係しているかという話だが、大まかに言うと

母指は上肢 ・下肢もしくは脊椎の二側(二側は運動器系である)、人差し指はお腹、中指は頚から上、薬指は胸 、小指は腰及び骨盤

である。

整体では掌心発現という現象を重要視している。これはお腹でも後頭部でもともかく愉気をして感応が深まったときに、どの指かが自然と動き出す現象である。
愉気に感応して、指がピクピクと動いたり、キューっと一本だけ曲がったりするのだ。

赤ちゃんなどは、具合が悪くてもどこが痛いとも苦しいとも言えないので、掌心発現を使って愉気すべき処を見つけるのである。
赤ちゃんは体も小さいので全身探してもたいして時間もかからないが、それでもどのあたりかと見当がつけられれば効率がよいし、その分早く必要な処に愉気をしてあげられる。
もちろん大人でも、本当に悪いところを自覚できる人などそうそういないので、どこに愉気をしていいか分からないときには掌心発現を用いて愉気する場所を絞り込むとよい。

野口晴哉先生の 「健康の自然法」 によると、

掌心感応のあるところ(手の感覚で相手と感応する処)に愉気する。之が何よりのやり方だ。しかし体は広い。掌は狭い。掌心感応の生ずるところを探さねばならない。ところが愉気していると相手の指に感応的な動きが生ずる。その部に感応しているといえる。相手の指に現れる感応的動きで掌心感応の生じやすい部分を求める。之を掌心発現という。」

とある。
そして、その求められた結論は以下のとおりである。

母指 - 四肢
食指 - 腹部
中指 - 頭部
薬指 - 胸部
小指 - 腰部

母指 - 脊髄神経系
食指 - 太陽叢 交感神経
中指 - 中枢神経系
薬指 - 副交感神経系
小指 - 骨盤神経叢

自分に対して行う場合、掌心発現を見極めるのは難しいので、前回の指の圧痛点を手がかりに愉気するとよいポイントを探すのも一つの方法である。

また、掌心発現によってその関連部位に愉気をするというのが本来の方向性だが、関連する指に愉気をして体の特定の部分に影響を及ぼすということも、試してみられると意外な効果を体験されるかもしれない。

手の感覚を敏感にする

整体では触って相手の体の状態を読むことが多いため、手の感覚が鋭敏であることが求められる。
触って読む、という中にはもちろん一般に言われる 「触覚」 ということも含まれるが、愉気を技術の根底に置く整体操法では、それ以前に相手の気を感じ取る 「気の感覚」 が育たないとならない。

整体では、合掌行気法という訓練法があり、これで気の感覚を培う。
合掌行気は、正座し合掌した指先から手に息を吸い込み、指先から吐く。これを繰り返して、指先から手に出入りする気の感覚をつかんでいく。
慣れてきたら、合掌した指先から丹田まで息を吸い、丹田から指先を通して息を吐いていく。

合掌行気をやりこんでいくと、手の感覚が鋭敏になるだけではなく、直感が鋭くなってくる。
広い意味で直感が鋭くなるが、特に愉気や操法における 「手のカン」 が育ってくる。
手に感じる 「感覚」 以前に、「直感」 で愉気をすべきところがフッと分かるようになる。

さて、合掌行気は整体をするものにとっては必須だが、プロとして体を観る立場の場合それだけでは多少心もとない。
生活の中で手の感覚が鈍るときというのは必ずある。
重い荷物を持ったり、日曜大工などをすれば、直ぐに鈍くなる。
食べ過ぎ、飲み過ぎ、寝過ぎ、考え過ぎでも鈍くなる。
などなど・・・。

そういうときに合掌行気にプラスして行うといいのが、指の付け根をつまんで愉気することだ。

手の指の根元を横からはさむようにつまんでみる。
つまんでいると、ジーンとするような圧痛がある指がある。
左右10本の指を調べて、一番圧痛のはっきりしている指を対象に行う。

対象となる指を見つけたら、母指と人差し指もしくは中指でサイドからはさむように根元を押さえて愉気をする。
強くはさむ必要はない。
ジーっと愉気していると、押さえている指の下をニュルッとした小さい何かが通る。
その何かが通ったら終わりでいい。

ニュルッと通るのは何かというと、指で圧迫されて止まっていた血液が、圧迫に負けずになんとかと通ろうと勢いを増してニュルッと通るのだ。
というのだが、実際本当にそうなのかはわからない。
ただ、その何かが通った後は、明らかに手の感じが変わる。
指だけでなく、手から腕まで血行が良くなるのだ。

いつまで愉気していてもヌルッとしたものが通らなかったら、適当なところで終えてもいい。毎回きれいに通るとも限らない。
ニュルでもヌルッでも、通るとはっきりと感覚が変わるが、通らなくてもそれなりに効果はあるので心配はいらない。

これを行うと、指先の怪我なども早く治るし、肩こりや頚の張りなどもラクになることが多い。
また、どの指が体のどこと関係しているという関連はあるのだが、それはまた次回にでも書こうと思う。
とりあえずは、手の感覚を敏感に保つ方法として役立てていただきたい。

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