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経絡整体(仮称) その3

経絡は、それぞれ関連する臓器の気血が流れるルートである。
例えば、肺経は肺を絡めながら胸と腕のつながり目あたりから体表へと流れだし、腕の前外側を流れて親指へと流れていく。親指の先まで行く肺経を流れる気血は、手首あたりで人差し指から腕の後外側を流れる大腸経に連絡して、また体幹部へと戻っていく。こうして、経絡は各臓器をつなぎながら全身を巡っている。

呼吸器に異常がある場合は、経絡では肺経に変動が起こっていることが多い。
ここで、整体では胸椎の3、4を観る。肺炎などの呼吸器の異常の場合、胸椎の3、4の棘突起がくっついていることが多い。
背部を流れる膀胱経の中で肺経の働きを調整できる肺愈という経穴(ツボ)は、第3・第4胸椎の間の外方約二横指、すなわち二側に相当する場所にある。整体操法における脊椎操法の処と、そうかけ離れてはいない。

呼吸器の異常を肺経で調整する場合、左右どちらの腕を使うのが良いだろうか。実は、左右対称に両方整圧、もしくは愉気しても良い。どちらかに絞った方が効果が上がりそうなときは、手のひらの母指の付け根、母指丘のあたりに肺経の魚際というツボがある。ここを両側触ってみて、気の通りの悪い方の腕を選択すると良いようである。

肺経の流れの中でどこを押さえればよいのかというのは、ケースバイケースなのだが、反応がでていることが多いのは、手首付近の太淵・経渠・列缺あたり、肘の内側の尺沢あたり、上腕の天府あたりなど、経穴(ツボ)に相当する部分であることが多かった。あとは、鎖骨の少し下にある中府。ここは、肺から気管を回って喉に行き、左右に分かれた肺経が体表近くに湧き出てくるところである。

一般に、「五臓六腑」 というが、経絡理論では、「六臓六腑」 である。六臓は、肝・心・脾・肺・腎の五臓に、心包が加わる。六腑は、胆・小腸・胃・大腸・に三焦が入る。
よく胃の腑、などと言うが、腑は中が空洞の臓器のことで、臓は実質がつまっている臓器である。
心包とは、文字通り心臓を包んでいるもので、心臓そのものの機能よりは、心臓を保護し養っているものといっても良いかもしれない。

心包経は、これとはっきり対応する実体としての臓器は見あたらないのだが、無理に当てはめれば心臓を包む心膜や心臓を養う冠状動脈にでも相当するだろうか。
しかし、経絡理論の臓とは、臓器そのものというよりも、その 「働き」 ・ 「機能」 を指していると言った方がいい部分もあり、解剖学で言う臓器とはそもそもピタリと一致するものではない。

例えば、脾経とは現代医学でいう脾臓のことではない。脾は胃と共に働き、消化吸収の役割を受け持っている。五臓に栄養を分配するのは、脾の働きである。臓器で言うなら、どちらかというと膵臓の働きだ。
今から20年ほど前、鍼灸学校に通っていたときに、講師として招かれて来ていたある高名な解剖学者が、「東洋医学には脾(臓)はあっても膵臓はない。鍼灸師が膵臓を語るな」 と言っていたが、これはトンチンカンな発言である。
脾経とは脾の臓を巡る経絡なのだが、この脾の臓とは今で言う膵臓である。解剖学の臓器の日本名は、東洋医学の五臓六腑からとったのであるから、解剖学の方が間違えたのである。

さて、話は飛んだが、心包経は心臓を守り養う経絡であり、心包経の働きが弱ると、動悸などの心臓疾患・鼻血・胸痛・顔ののぼせ・心窩部の痛み・正中神経の麻痺や痛み、しびれ・手の平のほてりなどが起こる。
心臓系統の異常があって、脊椎の両側を走る膀胱経の心包経の愈穴である厥陰愈に硬結があるとき、手の平の中央にある労宮と前腕の前側(手の平側)のほぼ中央(経穴でいえば郄門の少し上)を、両手の母指で交互にリズミカルに押圧すると、心包愈の硬結が弛み症状が軽減する。ちなみに、労宮は整体では 「鎮心の急所」 である。

膀胱経の肺愈は、第3胸椎棘突起の下の外方1.5寸。整体的に言えば第4胸椎の二側あたり。厥陰愈(心包経の愈穴)は、第4胸椎棘突起の下の外方1.5寸。第5胸椎の二側あたりになる。(二側は、対象となる棘突起の真横ではなく少し上になる)
整体では、肺は第3胸椎、心臓は第4胸椎である。整体操法における肺・心臓の急所とは、椎骨一つ分ほどずれているが、ともかく肺愈に硬結なら肺経、厥陰愈(心包の愈)に硬結なら心包経を操作する。その操作によって、それぞれの愈穴の硬結が変化し、体は良い方向へと動いていく。

脊椎椎側の硬結を、関連する経絡を用いて処理する。椎側、すなわち膀胱経上の硬結が消失すると、ともかく体は快方に向かう。
同時に、12の経絡の虚実を観て、虚は補い、実はその緊張を弛めることで、全身の経絡の張弛のバランスを取る。
これだけのことをするだけでも、体はかなり調う。

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