夏に向かって
昨年の夏は、記録的な猛暑であった。
果たして、今年の夏はどうなるだろうか。
今年の夏、関東以北では、節電や計画停電などで、エアコンを使わずに過ごさなければならないことが増えそうである。
エアコンの話をするならば、大前提として、エアコン(クーラー)は体に悪い。
体に対する冷房の害というのは、実はかなり大きいものである。
私などは、この世にエアコンさえなければ・・・・、と思うことすらある。
しかし、現実には現代日本の都市環境、生活環境、住環境は、冷房があることを前提に作られているので、今となっては冷房を使わない生活は、実際には難しい。
特に都市部のマンションやオフィス、満員の通勤電車などで冷房を全く使わなかったら、熱中症で倒れる人が続出するだろう。
今や都市は、コンクリートとアスファルトで固められ、大地が表出しているところはわずかしかない。土が見えるところといえば、公園、住宅の庭、線路の土手、街路樹の根本ぐらいのものである。これでは、夜の間も都市の熱が冷めることがない。
そしてまた、生活環境が冷房を前提に作られているのと同じように、現代人の体自体も、冷房があることを前提にして、昔とは変わってしまっている。
夏は、本来汗をかく季節である。
しかし、今は汗をかくことを厭う人が非常に多い。特に若い人、まして女性は汗をかきたがらない。人前で汗をかくことが、恥ずかしいと思っている人も多い。
社会全体がそういう認識なので、ちょっと暑ければすぐに冷房を入れる。
汗をかくようでは暑過ぎる、という感覚なのである。
治療院の近所のスーパーでも、今月始めの暖かい陽気で、すでに冷房を入れていた。
これでは、夏を前にして気温が上がってきても、体の汗をかく機能が働き出す機会がほとんどない。
現代人、特に体を使わない仕事に就いている人の多くは、十分に汗のかけない体になってしまっているのである。そのため、本来の体の冷却機能を活用せずに夏を過ごしている。
そしてまた、暑い屋外と冷房の効いた部屋や電車・バスなどを出たり入ったりしているうちに、体温調節機能が乱れて上手く作動しなくなっている人も多い。
このような状態で、突然エアコンがストップしたら、果たしてどうなるだろうか・・・。
本格的に汗をかき始めるのは、初夏に入る頃からである。季節に合わせて自然に体が変わり、汗が出やすいようになっていく。
しかし、現代では、この時期から意識的に、上手に汗をかけるように体を慣らしていく必要がある。
本来は、気温の上昇とともに勝手に汗をかくようになるのだが、通勤での乗り物や仕事場などで冷房が入っていると、この時期の体の変化が上手くいかない。
運動するなり、風呂を利用するなりして、積極的に汗をかいていくことが大切だ。
当然ながら、汗をかけない体のままだと、冷却機能が働かず熱中症になりやすい。
また、普段汗をかかないように生活していて、急に暑くなって大量の汗をかくことがあったりすると、水分だけでなく体に必要なミネラルなどが一緒に出ていってしまう。これは、非常に危険なことである。
こうなると、水分を摂っても、かえって体の中のナトリウムや電解質が薄まってしまい、脱水症状が治まらない。
こういう人は、汗をかくことが下手なのだ。
ともかく今年は、初夏から梅雨にかけて、例年以上に上手に汗をかける体作りを進めておいた方が良さそうだ。
そして、急に冷房の効いているところへ入ることを想定して、ジャケットやカーディガン、スカーフなど、「夏の防寒グッズ」 の用意も万全にしておこう。
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