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立つんだ、クララ!

被災地では、いまだに医薬品が不足しているという。
深刻な重い病で、継続的な医療の助けを必要としている方もいるだろう。
命に関わる危急の事態に、設備や薬などが無くて、助かるべき人が助からないというケースも起こりうる。
なんとか、被災地の隅々にまで、医療の手が届いてくれることを祈る。

今回の震災で、私達は人間の命があまりにも呆気なく失われてしまうものなのだ、ということを思い知らされた。
しかし、同時に人間の生命力の強さを見せつけてくれた人もたくさんいた。
その人達は、いざというとき、最後にものをいうのは自分自身の知力・体力・精神力である、ということを教えてくれた。
そして、それだけではなく、人と人との助け合う心があって、人間ははじめて生きていけるのだということも。

被災地に限らず、やむを得ず薬や医療の助けを借りなければならない人は、当然いる。
そういう人のところには、世界中どこでも、医療の助けが与えられることを願う。
医療は、それこそ人と人との助け合いの中から生まれてきた、人類の素晴らしい財産である。

しかし、一方では、医療業界という一産業の利益追求や、医学という学問の発展のために、不必要な投薬・医療を強要されるケースもある。
必要のない薬を飲み続けている人達、飲まされ続けている人も、それこそ星の数ほどいるのではなかろうか。

「寄らしむべし、知らしむべからず」 で、医療がなければ健康に生きることができないと、思いこまされているのが多くの日本人である。病気は、薬を飲まなければ治らないものだと思っているのだ。
そう思わせているのは、お上と製薬会社と心ない一部の(?)医師である。
病気を治すのは、いつでも自分自身の体であるということを知らされていないのだ。

これは、日本の診療報酬のあり方にも問題がある。日本の医師は、患者に薬を出さないと収入に結びつかない。
風邪の人に、「温かくして、ぐっすり眠れば大丈夫。水分も、多めに摂るようにね」 と言うだけでは、生活が成り立たないのである。
かくして、心ない医者は、「飲まなくてもいいけど、一応出しておきましょうか」 などと言って、大量の不必要な薬を出すことになる。ウイルス感染である風邪に、ウイルスには効かない抗生物質なども、いろいろ理由をつけて処方する。

何でもかんでも、薬は良くない、などと言う気は毛頭ない。
病気になって、薬で治療するということは、選択肢としては 「有り」 だと思う。
しかし、治ってもまだ、なにがしかの薬を飲まされ続けることが多い。
中には、止めても良い薬を、「飲み続けないと、大変なことになりますよ」、などと脅すケースもあるそうだ。
また、「お守り代わりに、(薬を)出しておきましょうね」 などと言う医師もいるという。
持ってるだけで安心、という心のケアであると善意に解釈したいが、それが自立する意欲を奪っているということも考えて欲しい。

子供の頃、「アルプスの少女ハイジ」 というアニメが放映されていた。多くの人が知っている、名作アニメである。
その中に、車椅子に乗っているクララという少女が出てくる。クララの足は、本当は治っているのだが、自分で 「立てない」 と思い込んでいるのだ。

しかし、あることがきっかけで、クララはついに自分の足で立ち上がる。

「クララが立った!クララが立った!」、ハイジも大喜び。
クララは、思わず立ち上がってしまった自分自身にとまどいながらも、やはりうれし涙が頬を伝うのである。
そして、クララとハイジは、抱き合って喜びあうのだった。
(たぶん、そんな感じだったと思う)

薬の服用や、人工透析、インシュリンの注射などなど、医療の助けを借りることが必要な人は、もちろんいる。
しかし、必要もないのに薬を飲み続けている人もいる。薬が無いと、安心できないのだ。
もう薬を飲む必要がないのに、薬を飲まないと健康でいられない、薬を飲まないとますます悪くなってしまうに違いない、と思い込んでいる人だ。

そういう人は、クララと同じなのである。本当は、自分の足で立てるのだ。立てない、と思いこんでいるだけなのである。

今回の震災では、医療のサービスが、未来永劫、いつでも当たり前のように受けられるとは限らない、ということが明らかになった。ある日突然、薬が無くなり、病院が無くなるということが、実際に起こりうるのである。

今こそ、薬の力に頼ることなく、体の持つ回復力・治癒力・生命力を信じて、それらを十全に活かして自立して生きていくということの重要さを、改めて考えてみるいい機会ではないだろうか。
すがりついていたものを手放して、自分の足で立ってみると、何とも心が晴れやかになるものである。


ただし、その後のクララも、毎日少しずつ歩く練習を積み重ねるのである。
長い間、薬が入ってくることを前提に体が回っている場合、突然薬を無しにするのは難しいこともある。体そのものも、薬に頼るようになっているからだ。
自立には、一定期間のリハビリが必要な場合もあることは、明記しておかなければならないだろう。


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