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January 2012

顔面神経麻痺

前々回まで、肛門(痔)の話から、大腸~十二指腸~胃~食道・咽喉~口内と消化器系を下から登ってきたが、口角炎で消化管の外に出たので、ついでに顔の問題にも触れてみよう。

今回取り上げるのは、顔面神経麻痺。ある日突然、顔の半分が麻痺して、だらりと垂れ下がってしまう。目も半開きで閉じず、額の皺も半分消え、口はしっかり閉まらず端から水が漏れてしまう。口笛も吹けなくなる。顔面神経麻痺とは、こんな症状である。

ヘルペスウイルスが引き起こすと言われたりするが、直接の原因は、頚や耳下腺などの局所的な冷え、例えば長時間風が当たっていたとか、汗をかいたまま急激に冷やした(汗の内攻)とか、そういうことが多いのではないかと思う。

現代医学の方ではあまり有効な治療法が無いようであるが、整体では割ときれいに治ることが多い。
外傷や腫瘍などが原因のものはまた難しい問題を含んでいるが、いわゆる特発性(原因不明の)顔面麻痺は、急処を的確に捉えさえすれば、多くはどんどん良くなっていく。

急処は、頚・顔・胸椎椎側・肩甲骨内側・腕などにあるが、症状が起こっているときはどれも手応えがあるというか、反応が出ているので、意外と急処がつかまえ易いのではないかと思う。

さて、顔面神経麻痺の操法手順の一例だが・・・


1.仰臥で後頭骨下縁及び上頚(第2頚椎三側)を四指を使って一定圧をかけて愉気。
  ほとんどは患側が硬直しているので、そちら側にウエイトを置く。

2.眉頭の骨の凹み・目の下頬骨の凹み・小鼻の脇の凹み・オトガイ孔、
  そしてこめかみに愉気。

3.耳の下(耳下腺のあたり)を人差し指か中指を当ててじっくり愉気する。
  ここは、重要ポイントの一つ。顔の痙攣などもここが急処。

4.坐位になってもらい、頭部第2調律点
   (耳の前を上がったラインと、瞳の中央を上ったラインが交わるところ)
   に愉気。 ( → 頚椎の硬直も弛む)

5.第2~第4胸椎の四側(肩甲骨の内側縁あたり)の硬直を外へ向けて押さえる。
  小さいヌルリとした塊の中に、更に小さい硬いもの(硬結)があるので、
  それをつかまえて愉気。

6.患側の上肢第七操法か、肩甲骨はがし。

7.患側の化膿活点(上肢第6調律点)を2~3回はじいて、上に向けて愉気する。

8.第4胸椎二側をしっかりと押さえる。


1.の上頚だが、たいてい麻痺がある側が硬直して第2頚椎が歪んでいるので、7対3ぐらいの割合で左右差をつけて押さえる。操法の極めに、坐位で最後にもう一度押さえることもある。

2.の顔の急所は、どちらかというと三叉神経のポイントの様に見えるものもあるが、顔面神経麻痺でもこれらの処に反応が出ており、愉気することで回復に効果を現す。

5.の第2~第4胸椎の四側の硬結だが、わかりにくい場合は伏臥で見てもよい。多くの場合第4胸椎の四側、肩甲骨の際の内側あたりにあるが、かなり小さな独特の感触がある硬結である。
これを上手くつかまえられると、操法の効果がはっきりする。人によっては、これを押さえると顔に響く感じがある。顔の麻痺を治す、魔法のポイントである。

7.の化膿活点は、顔面神経の系統の終末がこのあたりまできていると考えて良い。実は、化膿活点と肘の中間あたりに、化膿活点によく似た感じの硬結があり、これも顔面神経麻痺の急処である。よくわからなければ、化膿活点でも良い。

8.最後に第4胸椎をしっかりと整圧しておく。5.の四側の硬結もそうだが、第4胸椎を丁寧にしっかりとやっていくと、顔の形がどんどん変わっていく。


また、本人にも、顔の活元運動をやってもらう。活元運動を知らない人は、とにかく顔をいろいろに動かしてもらう。動かなければ、指で補助して動かしても良い。

顔面神経麻痺の治療は、発症してからなるべく時間が経っていない方が有利である。直後からなら、なお良い。
しかし、発症後半年以上経ってから操法を始めても、1ヶ月ぐらいでほとんど良くなってしまった人もいるし、交通事故で顔面神経麻痺になって数年経っているという人も、じわじわと改善してくるので、必ずしも発症直後からでなくても効く。


口内炎

新年になって、口内炎・口角炎ができているという人が何人かいた。
口内炎ができると、「胃が悪いんじゃない?」、と言われたりする。
口の中も消化管の一部であり、確かに食べ過ぎると口内炎ができることもある。
また、口内炎もひどくなると潰瘍化したりして、胃の異常と似たような状況が起こる。

口内炎は、ストレス・疲労の蓄積・睡眠不足などから起こることも多い。
年末年始で、生活が不規則だったり、飲み過ぎ・過食が続いたり、帰省などの疲労・ストレスなどで口内炎になっている人もいるだろう。

口の中の問題は、唾液の分泌に関することが一つ重要になる。唾液の不足が、口内の様々な異常と関わっている。
そこで、耳下腺・顎下腺・舌下腺などの唾液腺の働きを調整することが、口内炎などの口内の異常を治すために有効となる。

一つは、耳下腺・顎下腺を直接刺激する。耳下腺は、耳たぶの後ろの凹み。よく風船などを膨らまそうとして痛くなったりするところである。ここを、ふわっと押さえて愉気をする。強く押しすぎては、いけない。押さえることよりも、愉気するということに重点を置く。
顎下腺は、顎のウラを押さえて愉気する。親指でも他の指でもよいので、顎の骨の裏側を触るような感じで押さえて愉気をする。これも、押すというよりは、顎の裏に指を入れていくという感じで行う。

もう一つは、唾液が出ないことの主な原因となっている自律神経の乱れを調整する。この場合は、頭部第2調律点が良い。頭部第2調律点は、耳の前を上に登っていく線と、左右の目の中心を上に登っていく線が交わる2点である。ここを押さえて、じっくりと愉気する。

それから、上肢の急処も使う。肘の曲がり角と上腕にある上肢第5調律点・第6調律点を押さえておく。
これらの調律点は、化膿止め・消毒の意味で使う。
また、上肢第4調律点は消化器と関係が深く、ここも口内炎の急処である。

なお、同じ口の中でも、舌に症状が出るものは生殖器系、いわゆる婦人科系に問題があることが多い。舌というのは生殖器、特に子宮と関係が深い。
もちろん、生殖器に関連する処を調べなければいけないが、とりあえず以前記事にした恥骨の操法が効くことも多い。

それから、口の両端がただれたり切れたりする口角炎は、胃腸ではなく泌尿器系の変動である。
確かに食べ過ぎると口角炎になることがあるが、これは過食が続いて腎臓が疲労したために起こる。
過食を改めるのも当然必要だが、この時期は冷えと乾きも泌尿器に影響している。足湯水を飲むことを積極的に行なうと良い。

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