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June 2012

時代の変化と一側の硬直

ストレスという言葉が、日常語として使われ出して久しい。

常にイライラしている人を見ると、あの人ストレスがたまってるんじゃない、などと言う。
こういう人は、一昔、いや二昔前までは、欲求不満なんじゃない、と言われていた。

整体では、背骨の両側を 「椎側」 と呼ぶ。椎側で、棘突起のすぐ際に親指を除く4本指を並べた場合の一番内側の指一本分の上下に走る筋肉のラインを 「一側 (いっそく) 」 という。この一側には、精神的な問題や性エネルギーの状況が現れる。

仙骨から発する性エネルギーは、一側を通って頭へと向かう。実は人間の場合、性のエネルギーが生殖活動に使われるのは極一部である。他の大部分は、大脳の働きを始めとする感情や情緒、思考、意欲、行動力などに転換される。人間は、この有り余る性エネルギーを様々な活動に昇華させて、現在の文明社会を作り出したわけである。

骨盤から上昇する一側が、途中で閊えることがある。一側が閊えてエネルギーの停滞が起こると、精神的もしくは肉体的な不調和が発生する。そして、その閊えが脊椎のどこに生じるかで、現われる異常・症状は異なる。

また、一側は性エネルギーが仙骨から大脳へと上昇するルートであると同時に、今度は頭の働きに転換した精神的なエネルギーとでも言うべきものが体の方に下降して来る導線でもある。この上から降りてくる一側が閊えても、やはり心身に様々な問題を引き起こす。

下から来る一側が閊える場合は、環境や体の問題など何らかの事情で要求を叶えることができない状況があるわけで、これはいわゆる 「欲求不満」 的症状であるとも言える。やりたくもない仕事を嫌々やっていたり、言いたくても言えない不平不満を抱えていたりすると、下から上がってくる一側が閊え出す。
これに対して、上から来る一側が閊えるのは、頭の中のある種の緊張が体に反映して不調が起こるということで、いわゆる 「ストレス」 による心身の失調と言ってもいい。神経性胃炎など、神経性○○症などと呼ばれるものの多くは、上から来る一側の閊えである。

例えば、下から上ってくる一側が第8胸椎で閊えると、感情が不安定になる。まさにイライラしたり、怒りっぽくなったり、感情に過剰な高ぶりが生じてくる。第6胸椎で閊えれば、性エネルギーが食欲に転換して過剰食欲になったりする。
同じ第6胸椎で閊えるのでも、上から来る一側が閊えているとしたら、大脳的な緊張から起こる胃の異常で、神経性の胃炎やストレスによる食欲不振などは、この類いである。

一側の閊えは、椎骨の上がり下がりと連動することが多い。一側が下から来て閊える場合は、多くはその閊えている椎骨は上がって上の椎骨にくっついている。逆に、上から来る一側が閊える場合は、その椎骨は下がって下の椎骨にくっついている。
一側の硬結・硬直自体を押えてみると、下から来た一側の場合、下に向けて押える方が抵抗が強い。上に向けて押える方が抵抗が強ければ上から来た一側である。


閊えの無い一側は、愉気しながら押えて外側に向かって弾くと、ぱらぱらとした何本かの線のようなものを感じる。その線は7本とも10本ともいわれるが、この細い線がキレイに分かれていて柔らかい弾力がある状態が健全な一側の姿である。
しかし、実際には、一側が全てきれいにぱらぱらと弾けるような人はほとんどいない。そのような人は、まさに心身に閊えの無い天真爛漫な人である。

一側が閊えて硬直すると、このぱらぱらとした線が一かたまりになってしまい、一本の太い線となってしまう。更に閊えが進むと、その硬直したラインの一点に硬く結ばれた塊のようなものを生じる。これが一側の硬結である。一側の硬結は米粒の半分とか、それ以下の小さな塊だが、異常が進むほど硬く小さくなっていく。


この十数年の間に、現代人の一側は非常に硬直し、その緊張が弛みづらくなっている。最近では、子供でも一側がきれいに分かれている子は少ない。
その原因の一つは、TVゲームの流行から、それに続くパソコンや携帯電話の普及であろう。TVゲーム、そしてパソコンや携帯などで、頭、眼、指先などを酷使するために、神経系の緊張、疲労が抜けづらくなっているのだ。

そして、それらの機器の発達がもたらした高度情報化社会である。あふれかえる大量の情報の波に常にさらされると共に、携帯やメール、ネットを通じて常時他者と繋がっているという緊張状態の持続は、現代人の精神を疲弊させつつある。

携帯電話には、いつでも連絡が取れるという便利な面はあるが、逆にどこに居ても携帯で捕まってしまうという状況が、ある種の窮屈感をもたらしていることは間違いないだろう。
その人の持つ人間関係や携帯の使い方にもよるが、日常的に携帯に依存した生活をしている人ほど、自分の部屋で一人で居ようが、旅行先だろうが、喫茶店でくつろいでいようが、携帯の電源を切らない限り、誰にも邪魔されない本当の一人の自由な時間は無いのである。
では、電源を切ればいいではないか、ということになるのだが、今度は常に連絡が取れるようにしておかなければならないという、不文律というか、暗黙の了解がある。それを無視して電源をOFFにしておくのは、それはそれで、また新たなストレスを生むことになる。


十数年前、治療院を開院した当時は、頭部・頚部の操法は、大抵坐位でのみ行なっていた。特に必要のある人以外は、仰臥で頭や頚を操法することはほとんど無かった。
しかし、だんだんとそれでは頭の緊張が弛まない人が増えて来て、今では半数以上の人に仰向けの状態で頭部・頚部、また時には眼にも愉気をしている。これも大げさに言えば、時代の要請ということになるのだろうか。

一側の硬結を処理するには、愉気の感応を図りながらながら整圧し、最後に息を吐ききる瞬間に外側に向かって弾くのだが、この硬結を弾いて弛めると、非常に快感がある。
しかし近年、この一側の硬結を弾かれてもあまり快感を感じない人が増えてきている。そこまで現代人の一側は、鈍く硬直し固まってしまっているのだ。

一側が強く硬直している場合、その奥に深く潜んでいる硬結をつかまえるのは、なかなかに難しい。1回の操法では、直接硬結にアプローチできないこともある。そんな頑固な硬直・硬結には、それこそ頭部・眼などの調整をしたり、下からの一側の場合、骨盤への様々な操作により、硬結を浮かび上がらせる準備をする必要がある。
一側を弛めるには、眠りを深くする操法も重要となる。部位で言えば、主に後頭部、胸部、アキレス腱、などの操法である。
また、テクニック的なことでいえば、場合によっては一側・三側を交互に繰り返し刺激する方法も、硬直した一側を弛めるのに有効である。(主に胸椎一側)

野口整体の世界では、現代は肝臓の時代だとか、呼吸器の時代だとか言われる。そのどちらも、時代の要請があるのだが、同時にこれからは神経系の調整がどうしても外せないものになってくる。どんどん硬直の度合いを高めていく一側を、どう健全に保っていくかということが、新しい時代に適応していく過渡期にある現代人の、時代の急処となることは間違いない。


美容番長 ― 8種体癖

体癖の分類の中に、捻れ型体癖というものがある。捻れ型の持つ感受性の大きな特徴は、何事に対してもとにかく “ 勝とう 、負けまい ” とするところである。

捻れ型には、7種と8種がある。“ 勝とう ” は7種、“ 負けまい ” は8種である。
捻れ型は、誰にでも対抗する。対人関係においても、相手を負かして自分が優位に立とうとするところから入るので、なかなか良い人間関係を作るのが難しい体癖であると言える。

そんな捻れ型の人が、なぜか美容師や美容部員(化粧品のアドバイザー)などに多い。7種もいるが、特に8種は多い。
8種の負けず嫌いは、たとえ相手が客だろうとも必ず発揮される。もちろん接客であるから、はなから喧嘩腰ではないにしろ、その負けまいとする対抗心は会話が続いていくうちに必ずムクムクと頭を持ち上げてくる。

美容師さんは、お客をリラックスさせるつもりなのかサービスのつもりなのか、とりあえずあれこれ話しかけてくる人が多い。

「お仕事は、何をされているんですか~?」
「お休みは、どちらか出掛けられたんですか~?」

8種店長、8種経営者の場合、お客が同じくらいの規模の個人事業主、更に同じ接客業であったりすると急に捻れ出す。特に相手が同性の場合は、捻れやすい。捻れるというのは、すなわち対抗心を燃やすということだが、8種的捻れは特に会話に出る。

うちはもうこの場所で何十年やっているとか、誰それという有名人も通っているなどと、訊いてもいないことを急に自慢し始めたりする。
また逆に、このぐらいのこぢんまりとした規模でやるのがいいのだとか、雑誌に載るような店じゃないが、うちは敢えて隠れ家的にやっているんだとか、これまた相手は何も言っていないのに、勝手に自分が気にしているところを自ら暴露しつつ、先手を打って予防線を張ってきたりする。

そして、客が休みに海外に行ったなどと言うと、自分はそこには行ったことはないがどこそこには行ったことがある、いやああそこは良かった、本当に良かった、などと張り合い始めたりする。そしてこれまた、自分は海外に行くよりも、まずはこの日本の良いところを探していろいろ見て回りたい、やっぱり日本人ですからねなどと、どうしても負け惜しみ感がにじみ出てしまう口調で長々と演説を始めたりする。
自分が訊いたんじゃないか、とその負けず嫌い振りにウンザリしても捻れてしまったらなかなか元に戻らない。

別に、仕事の規模など大きい方が良いと決まったわけでもないし、海外旅行が国内旅行よりも上等だというわけでもないのだが、何かこう自分で負けていると思ってしまうと、反射的と言ってもよいぐらいに突然 「捻れスイッチ」 が入ってしまうのだ。
そして、その 「こだわりの弱点」 を結果的に自分から白状してしまっていることに気がつかないのが、捻れ型8種の憎めないところではある。

しかし、8種というのは不思議と相手をも捻れさせる特殊能力を持っている。8種の相手をしていると、憎めないどころか、普段冷静な人もなぜかムクムクと対抗心が湧き上がって来がちなのである。
その結果、客と店員が目くそ鼻くそ的な自慢合戦を繰り広げたりすることになる。

美容部員にも、8種は多い。8種には、胴回りが太めで、固太り的な人、ボリュームのある体型の人が多い。

一昔前と比べて最近の化粧の流行りは、どちらかというとナチュラルメイクが主流なんじゃないかと思える。しかし、捻れ型である8種体癖は、“ やった感 ” を求める人達なので、したかしないか分からないようなあっさりメイクでは満足しない。美容部員自身がしているのかいないのか分からないようなメイクでは仕事にならないのだろうが、それにしても8種部員のメイクは濃い!!
そんな8種の施すメイク術は、やはりキッチリと塗り上げていくはずである。それはまた、化粧品の消費量を増やすことにもつながり、メーカー側とも利害が一致することだろう。
まあ、聞くところによると、ナチュラルメイクというのは必ずしも薄化粧ということでもなく、かなり作り込んだ上でのナチュラル感というものもあるのだそうだが・・・。

8種の女性は、相手が自分よりもキレイだと思う人には、多少に関わらず “ 捻れる ” だろう。ことに美容に強い関心があって、そういう職業に就いている人であったならば・・・。

女性同士であった場合、8種の美容師も美容部員も、自分がキレイだと認めた人には、決して本心から更にキレイにしてあげようとは思わないだろう。特に、キレイ度合いが自分と競っている(と勝手に思っている)人に対しては・・・。
こんなことを断言してしまってもなんだが、無意識的な領域で必ずそういう心が作用していることと思う。
もちろん、そんな宿命的な対抗心を凌駕するプロ意識の高い8種の美容師、美容部員もいる・・・・・・であろう。  ・・・いるかも知れない。 ・・・いて欲しいものである。


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