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 「先(マヅ)体容(カラダノカタチ)を正して・・・」 その2 

「先(マヅ)体容(カラダノカタチ)を正して、後(ノチ)に息を調和(トトノフ)べし」
〔まず姿勢を正しくし、さらに呼吸をととのえなければならない〕
~ 「病家須知」 ~


「息は鼻から出て臍下丹田におさまり、臍下丹田から出て鼻へ漏れる。後には耳からも出て、毛穴からも出るのである」

続いて、耳から呼吸する人をして、「呼吸がととのい精神が集中している」 と評している。

耳や毛穴からも息が出るという感覚があるということは、ただ呼吸が深いだけではなく、呼吸に対応している身体感覚が精妙であるということであろう。
そして、呼吸が深く、かつ静かで細やかであることは、精神や身体もまたととのっていることと同義である。

心が静かであるときには、必ず呼吸もゆったりとして安定している。
精妙な身体運動を強いられる場面では、当然精神も集中していることが求められるが、そうした心身の状態を実現するには呼吸もまた静かで細やかでなければならない。たとえ深い腹式呼吸であったとしても、鞴(ふいご)のような荒々しい呼吸では、動作に精妙さを求めるべくもない。
整体操法でもそうだが、書道、華道、茶道、日舞などの芸事でも、呼吸の深さとともに細やかさは要求される。

また、全身の毛穴から呼吸しているという体感は、心が外の対象物にのみ向いているのではなく、ほどよく自分自身にも向いている、つまり心のバランスが良い状態であることを示している。
外部からの情報や刺激の多い現代では、なかなか自分自身の心や体に意識を向けるゆとりがない。だからこそ、日に1回でも活元運動や脊椎行気法をおこなったり、この病家須知の勧める 「姿勢を正し丹田で息をする」 ことなどを実践することが意味を持つのである。

ちなみに、中国の気功では、「調身」・「調息」・「調心」、ということをいう。体の姿勢を調えること、呼吸を調えること、心を落ち着けること、の三つが気功の修練には重要であるということである。
またこれは、「姿勢を正せば、呼吸も深くなる。呼吸が深くなれば、自然と心も落ち着く。心が落ち着けば、更にまた呼吸も深くなる。呼吸が更に深くなれば、体の力みがとれてより姿勢が調う」 といった具合に、姿勢・呼吸・精神の安定が、三つどもえに相乗効果を挙げていく気功の深化・上達のプロセスを示している。
なお、身体・呼吸・精神の調和の大事については、この病家須知でも十分に語られている。


「口は一切閉じるのがよい。日常の所作においても常にくちびるは閉ざしているのがよい」

呼吸法の中には、野口整体の 「邪気の吐出」 などもそうであるが、ある特別な効果を狙って鼻から吸って口から吐くものもある。しかし、呼吸の基本は鼻から吸って鼻から吐く、である。

現代医学では、近年口腔科の医師・西原克成氏などの活動によって鼻呼吸の重要性(口呼吸の害)が徐々に周知されてきているが、東洋の医学・養生では、昔から鼻呼吸を当たり前のこととして口で呼吸することは戒められてきたのだ。


「癇症のさまざまな症状、肩こり・のぼせ・めまい・胸腹のつかえ・気のふさぎ・差し込み・腹のけいれんや婦人の血の道などは、この姿勢と呼吸法を用いれば、その症状はしだいに改善するはずだ」

癇症とは、感情の起伏が激しすぎることで引き起こされる症状、いわゆるヒステリーのようなことであろうか。
それ以外にも、いろいろな症状は姿勢と呼吸を調えることで解消することが多いと著者の平野重誠は述べている。

以前、時代の変化と一側の硬直 でも書いたが、ただでさえ現代人は情報化社会の波に揉まれ、頭でっかちの 「上実下虚」 になっている。
頭にエネルギーが集まり、みぞおちが硬く閊え、息が深く吸えない。臍下の一点は力をなくし、体は中心を失っている。

丹田に力の集まる 「上虚下実」 の体勢をつくっていくことは、現代人の多くの不調を解決するための王道である。
そして、なにを隠そう (始めから隠してないが!)、整体操法の眼目もまた、腹部第1調律点(みぞおち)が弛み、腹部第3調律点(丹田)に力が集まるよう、 「上虚下実」 に体を整えていくことなのである。


 → 「先(マヅ)体容(カラダノカタチ)を正して・・・」 その3

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