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体を変える 「スイッチ」 2

整体操法は、全身の働きを調整するといっても、その手段として全身をくまなく押したり揉んだりするものではない。どちらかといえば方法論としては反対で、なるべく効率的に少ない刺激で体を整えるのがよいという考え方である。
こちらの働きかけが必要なところもそうでないところも一緒くたに揉んだり押したりすることは、体を鈍くもさせれば、自力で回復する力を奪うことにもなる。たくさんやるのが親切だ、または数打てばどれかが急所に当たるだろうといった態度は、整体ではもっとも嫌うところである。

操法では、背骨を中心に体のあちらこちらを押さえたり揺すぶったりすることもあるが、それはあくまでも体が今どういう状態にあるのかを調べているのであって、愉気を以て体と対話しているようなものである。イメージとしては、潜水艦がソナーで音波を出して周囲を探索するのに似ているかもしれない。
もちろん、その調べ自体も愉気でなされることと、本当の急所を見つけるために料理であら熱を取るかのように表面的な疲労を取っていくので、調べているだけで体が楽になり整っていくということも確かにある。
ただし、調べはあくまで調べであり、そこから読み取ったことから操法を組み立てるのである。そして、その組み立てていく中には、「本日の急所」 とでもいうべき 「スイッチ」 を捜すことも含まれる。

その日、その時、その人を変える急所というのは、体の中にそうたくさんあるわけではない。たいていは、2~3箇所。本当にその時の体を変える急所というのは、一点であることが多い。その 「スイッチ」 を見つけることが、操法の中でも重要となるところなのだ。
さらに、その 「スイッチ」 は、毎回はっきりとした形で必ず 「ある」 とも限らない。体の変化の波の中で、静止したかのような凪の時もあり、そういうときには 「スイッチ」 も姿を現さない。また、体が鈍ってしまっている人、すなわち体が変化する能力を失ってしまっている人などは、埋もれてしまった 「スイッチ」 が出てくるまでに、時間(期間)をかけて硬直・鈍りを 「解凍」 しなければならないこともある。


いろいろな急所の中でも、一気に気分や体調を変えて元気が出る 「元気スイッチ」 は、一回の操法の組み立ての中でも、長期的な組み立ての中でも、まずは大事な急所である。
体というのは、悪いところを片っ端から治していけば、最後にはすべて良くなって元気になる、というものではない。まず元気にしていくと、その体の勢いで悪いところが治っていくのである。その意味で、まず 「元気スイッチ」 をON!にするということが、操法の組み立ての中で短期的にも長期的にも重要な要素となるというわけである。

「元気スイッチ」 にもいくつかの系統がある。疲労の中心とでもいうか、全身の疲労感をもたらしている実態としての部分的な硬直。さらにその中の、ここさえ弛めば全身の強張り・閊えが連鎖的に一気に解除されていくであろうという一点。
また、体のエネルギーの発散が上手くいかずに鬱滞してしまっている状況も、疲労感に似た倦怠感・停滞感がある。このエネルギーの閊えを開放する一点。これも一気に身も心もスッキリさせる 「元気スイッチ」 である。
体が季節の変化に対応しきれずにいる場合、その季節に乗り切れずにいる閊えを取り除く一点。これも、「元気スイッチ」 となることが多い。
つまり、体のや心の 「閊え」 が元気を失わせていることが多いということだ。その停滞を解除する一点が、「元気スイッチ」 となるわけである。

そのスイッチの場所は、時と場合によって変わってくるわけだが、体癖によっても、ある程度 「元気スイッチ」 の現れやすい場所が決まってくる。たとえば、左右型はお腹にスイッチが現れやすい。左右型特有の消化器系の問題や感情の問題が腹部に出るのである。捻れ型は、どこを押さえるかということもあるにはあるが、それよりも第3腰椎に焦点を集めて腰を捻ることが 「元気スイッチ」 をON!にする方法になっていたりする。
前回ちらっと書いた運動焦点も、体癖と密接な関係にある。また、どんな言葉をかけると元気が出るか、意欲が出るか、そういうことも体癖によって決まってくる。
実は、「元気スイッチ」 は、体にだけついているわけではない。気持ちの方にスイッチがある場合も多く、心のスイッチを上手く押すことができると、場合によっては体のスイッチよりも大きな変化が呼び起されることもある。

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