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体を変える 「スイッチ」 1

ある学習塾のCMで、「やる気スイッチ」 というのが出てくる。どの子にも 「やる気スイッチ」 は必ずあって、そのスイッチさえ押せば、勉強も猛烈にやる気が湧いて来るという魔法のスイッチなのだ。
問題は、そのスイッチのある場所が子供によって一人一人違うということだ。CMでは額にあったり、背中にあったり、後頭部にあったりするのだが、つまりは人によってやる気を起こさせるポイントは違うということだ。その学習塾では、子供の個性や性格に合わせた指導法で、上手く 「やる気スイッチ」 をONにするということなのだろう。

さて、整体操法の世界においても、やる気スイッチではないのだが、体を一気に変えるスイッチのようなものがある。それは、やはり個人個人で場所が違うし、同じ一人の人でも時によって場所が違い、頚にあったり、腰にあったり、腹部にあったりする。

整体では背骨の観察を重視しているが、それは背骨及びその周囲の筋肉に心身の状態がリアルに表れるからである。背骨自体の転位(ズレ・歪み)、椎側(一~四側)と呼ばれる背骨の両サイドの筋肉の緊張・硬直・硬結・弛緩とその感覚変化として圧痛・過敏・鈍りなど、背骨に表れる異常は身体の働きのあらゆるところと関連している。
もちろん、その背骨周囲の異常自体が体を一気に変えるスイッチになっていて、それを調整することで体がいっぺんに整うこともある。
一方、その脊椎の異常を整えるために、別の部位を刺激した方が上手くいくこともある。たとえば、頚椎部に異常があっても、直接その異常箇所に愉気するよりも、その異常が起こる原因になっているところを調整した方が頚椎が整うこともある。7つある頚椎のうちどの椎骨に異常があるか、一側の異常なのか二側の異常なのかなどによって違ってくるが、目・頭・肩甲骨・肩関節・上肢・腹部などのどこかにスイッチがあって、そのスイッチを押せば(その部位を調整すれば)、頚椎の異常が解消することもある。

スイッチにもいくつか種類がある。まずは、ともかく心や体の閊えがとれて、スッキリ快適になるスイッチ。なんだかわからないが元気が出てきて、それこそやる気が出てくるスイッチ。いってみれば、「元気スイッチ」 とでもいうようなスイッチで、これは操法の中で高頻度で使われるスイッチである。
体が良くなるには、悪いところをどう治そうかと考えるよりも、まずは元気が出るようにする、気分が明るくなるようにすることの方が大事である。体は、「治すものではなく、治るもの」 であるからだ。

「元気スイッチ」 は、その人の心身の働きの閊えているところ、つまりは疲労して働きが停滞しているところにあるともいえる。その部位に生じている異常、硬直なり硬結なりを愉気・整圧して調整すると、一気に気分も体も楽になる。
全身が疲れているように感じている場合でも、実際はある箇所・ある系統の疲労であることが多く、その部分的に偏ってある疲労を解消すると、全身がスッと軽くなるのだ。

「元気スイッチ」 は、脊椎であれば、よく指圧やマッサージで施術の対象となる二側(いわゆる脊柱起立筋の盛り上がったところ)の硬直よりも、一側や三側にあることが多い。一側は背骨の棘突起の際を縦に走るラインで、精神的な問題、ストレスや感情のもつれなどにからむ。三側は脊椎起立筋の外縁のラインで、多くは内臓の異常と関連する。一側・三側の硬結を処理すると、その直後からサッと気分が変わり、体も楽になる。
また、腰椎には運動焦点と呼ばれる、その人特有の偏って力が集まるところがある。これは体癖とも関係するのだが、この腰椎の運動焦点は、その人の力の入りやすいところである。つまりは、同時に疲れもたまる場所であるわけだ。ここを調整すると、体は元気を取り戻し、新たに活動するための活力が湧いてくる。

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