食べ過ぎとその周辺 (4)
食べ過ぎてしまう原因のほとんどは、心理的な問題である。多くの場合、ストレスを食べることで解消している。お腹がふくれると心は平安になり、なんとなく気持ちが楽になるのだ。
しかしもちろん、体の問題からくる食べ過ぎもある。その中の一つは、「栄養が足りないために起こる食べ過ぎ」 である。
今までに何人かのお母さんから、同じ内容の相談を受けたことがある。それは、「子供には欲しがるだけ食べさせた方がいいといいますが、うちの子は制限しないととんでもない量を食べてしまうんです」 というものだ。
これに関しては、ある一つの処方で、どの子の 「大食い」 も解決した。
その方法というのは、
「今日から毎日お肉を食べさせて下さい。ハンバーグ、ハム、ウインナー、ステーキ、豚肉の生姜焼き、チキン・ソテー、何でもいいので飽きるまで続けて下さい」
「それ以外にも、卵、お魚、チーズも良いです。つまり、動物性のタンパク質をたくさんあげて下さい」
そのアドバイスを実行していただいた結果、どの子もさほどの期間もかからずに 「大食い」 が解消し、「常識的な量で満足するようになった」 という報告をお母さん方から受けることができた。
なぜ肉を食べさせて子供たちの 「大食い」 が治まったのか?
そもそもなぜ子供たちが大量に食べてしまっていたのかというと、タンパク質の摂取量が足りていなかったからだろうと推測される。そしてその不足分をなんとか補おうとして、大量に食べることになってしまっていたのだろう。
人間の体の大部分はタンパク質からできているが、そのタンパク質を合成するアミノ酸の内9種類は体内で合成することができない。つまり、食事で摂るほかない。
それら 「必須アミノ酸」 が十分含まれたものを食べていれば、それほどたくさん食べなくても済んだのだが、食べものの中にタンパク質が少ないと、どうしても量を食べないとならなくなる。米などにも多少のタンパク質は含まれているので、なんとか量でカバーしようとして、お腹が太鼓のようにふくれるまでご飯を食べることになったのだろう。
そこで、子供達に肉などを集中的に摂ってもらった結果、タンパク質が足りて大食いする必要がなくなったのだ。タンパク質は大豆などの植物性のものもあるが、この場合には吸収効率のいい動物性のタンパク質、つまり肉や魚、卵などを食べさせてもらった。
さて、食べ過ぎというほどたくさん食べていても、ある種の栄養が足らないために更に食べてしまうということがあるということなのだが、この先もずっと肉や卵をたくさん食べさせないといけないかというと、実はそうでもない。
一度ある程度まで必要な栄養が足りてしまうと、その後はそれほど与えなくても大丈夫なのだ。きっと、欠乏していた栄養素が十分に補充されると、体内の栄養をめぐる循環が巡航速度に乗るのだろう。
この種の食べ過ぎは大人でも起こるのだが、子供の場合は日々成長しているので、栄養素の不足が大人よりも切実であろう。
しかし、本来子供は産まれて13ヶ月の準胎児期とでもいう時期にしっかりと栄養をつけておくと、それ以後の人生では省エネ運転で十分活動できるように体の基礎が出来上がるのだ。
整体では、「補食」 といって、生後13ヶ月の間にみっちりと栄養を摂らせることを推奨している。これは、離乳食とは全く違う概念で、積極的に栄養、特に動物性のタンパク質を与えることで体の基礎をしっかりと作ることを目的としているのだが、その話はまたいつか改めて・・・。