アルプスの少女ハイジ その5 ~アルムのおんじ~
前回の続きになるが、アルムのおんじことハイジのおじいさんは、ハイジの友達であるクララが山に来るということになった時点で、クララが歩けるようになるためにはなにが必要なのかということをすでにある程度わかっていたのだと思う。
おじいさんは、ハイジからフランクフルトでの生活や、クララと彼女を取り巻く人々のことも聞いていたであろう。
クララには、歩きたいというという欲求、そしてそもそも自発的に行動するための意欲が決定的に欠如していたのだ。
その意欲を取り戻すためには、子供達だけで遊ばせ、生活させることが役に立つと、おじいさんは考えていた。
これも前回書いたが、おじいさんとクララのおばあさまの阿吽の呼吸で、ロッテンマイヤーさんの排除は実現されることになる。(ロッテンマイヤーさんには、ちょっとかわいそうだが・・・。)
しかし子供達だけで山の牧場に行かせるなど無責任で危険なことだと主張するロッテンマイヤーさんの弁を聞いて、おばあさまはなぜ子供達だけで山に行かせるのかおじいさんに聞いてみることにする。
おじいさんは、子供達だけで山に行かせることにこそ意味があるという。
おじいさん
「あの子(クララ)を抱いてみたり、体の使い方、腰の動かし方を見てみますと、クララは立って歩けるはずだとしか考えられません。ですから、今しばらくワシに、この山にあずけていただきたいのです。
もちろん立てるまでには時間がかかるかもしれません。立てることを信じられなくて、クララが途中でくじけてしまうこともあるでしょう。
だが、もしクララが大人を頼らず子供同士で遊ぶことの楽しさを知ったら、自分から立ちたい、どうしても歩きたいと心から願うようになったら・・・。そして、それを助け、励ましてくれる友達がいたら・・・」
おじいさんが言ったように、クララはアルムの山という素晴らしい自然環境とハイジやペーターという年の頃が近い子供たち、ヤギたちやセントバーナード犬のヨーゼフなどに囲まれた生活を送る中で、いろいろな刺激を受け、少しずつ心も体も変わってきて、ついには立って歩くことができるようになった。
そしてそこにはなによりも、おじいさんの深い洞察力、厳しさとやさしさを併せ持った辛抱強い対応があったことは特筆すべきことであろう。
おじいさんは、クララの中に眠っていた、歩きたい、自由に遊びたい、という欲求の種子が、日光を浴びて、水を得て、自然に芽が出るよう、花が咲くようにと陰日向に助け導いていったのだ。
しかし、こういう仕事をするようになったせいなのか、そもそも大人になるとみなそうなのか、子供の頃と同じ話を視ても、だいぶ見え方は違ってくるものだ。
そんな私の今の目線で見たら、この物語は 「アルプスの少女ハイジ」 というよりは、「アルプスで立った少女クララ」・・・。そして、サブタイトルは、 ~クララはいかにして立ったのか~・・・。
本当のところをいえば、「アルムのおんじ」 にしたいところだが・・・。
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