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March 2017

うつ伏せ

整体操法では、うつ伏せで、手を体の脇に下ろした姿勢になってもらって、背骨や骨盤を調べたり調整したりする。

なぜこの恰好がよいかというと、体の力がすっかり抜けて、調べるにも操法するにも都合がよいからである。

ただ、この形だと頚などが痛いという人は手の位置を自由にしてもらったり、膝などが痛ければタオルをどこかに入れて痛くないようにしたりする。
人によっては、はじめは窮屈に感じる場合もあるこの恰好だが、調整を繰り返していくうちにだんだんと楽にこの姿勢ができるようになってくるものだ。

この手を下ろしたうつ伏せ姿勢で、顔を左右どちらに向けてもどこにも抵抗も苦しさもなくなったら、それは体のこわばりが取れて本格的に体が整ってきたということでもある。

ただし体癖によって多少のやりやすい、やりにくいということはあって、例えば上下型や前後型では、顎を立てたりして顔を真っ直ぐにした方が楽な人が多い。
左右型や捻れ型の多くは、横向きが楽である。逆に真っ直ぐ向くのは苦手なことが多い。
閉型は、うつ伏せ姿勢が苦手なようで、なんとなく体の収まりが悪いというか、落ち着かない感じがある。

「うつ伏せになって下さい」、といっても通じない人がたまにいて、「下向きです」 と身振りも付けてようやくわかることがある。地域的な言語の問題なのかもしれない。

以前5歳くらいの女の子に、分からないだろうと思って、「はい、上向きになってください」 といったら、「仰向けでしょ」 といわれてびっくりしたことがある。
子供だからといってわからないと決めてかかってはいけないな、と少々反省した。
もしくは、女性は5歳でもレディとして扱うべき、ということなのか・・・?

「膝痛 絶対3回で治します」

「膝痛 絶対3回で治します」、という看板が通勤途中にある接骨院の前に出ていた。どんな状態の膝でも3回の施術で痛みを無くすことができるとしたら、それはすごい技術である。

 

以前、関西から野口整体を習っているという鍼灸師の女性がいらしたことがある。この先鍼灸でやっていくか、整体で身を立てるか迷っているとのことで、参考までに自分の習っているところ以外の整体を体験したかったということのようだ。

その彼女がいうには、整体操法ではクライアントの要望に応えきれないところがあるとのことで、それで鍼灸と整体とで悩んでいるとのことであった。

具体的に整体操法のどういうところが力不足だと思うのかと尋ねてみると、「膝の痛みなどは、整体操法ではあまり良くなりませんよね・・・」 という。どうやら彼女の場合は、鍼灸の方が成績が良いらしい。

その時は、膝が痛くなるにもいろいろと原因があるから、その原因を探ってそちらを調整していけばそれなりの効果はあがるのではないか・・・、といったようななんだかはっきりしないコメントをしたような記憶がある。
それはその通りではあるのだが、今になってみるともっと気の利いたアドバイスができただろうにと思う。

それからもう十年以上たっているが、私の経験値もその分上がり、当時よりはいろいろと技術も工夫がなされている、と思う・・・。
件の女性に言ったように、膝の痛みの原因にもいろいろあって、腰から来るものや、股関節や足首などの関節のくるいが影響しているものや、内臓の疲労や異常から来るものもある。
もちろん膝そのものが震源地の場合もあり、対処の仕方はその時々で変わることになる。

5~6年くらい前だったか、原因はともかく下肢の筋肉の調整と、2つ3つの膝のポイントを愉気するぐらいでとりあえず膝の痛みを軽減する方法を見つけた。
ちょっとした骨格的なトラブルで痛みが出ているような場合は、これだけですっかり良くなってしまう場合もあり、それこそ1回でウソのように痛みが消えててしまうこともある。
最近は、この方法で痛みを軽減しつつ、本当の悪いところを合わせて調整していくことが専らになっている。

 

私の場合、痛みでも他の症状でも実はあまり熱心に症状を無くそうとはしていないことも多い。もちろん今痛くて苦しんでいる人には痛みに対して軽減するような処置はするのだが、操法の主眼はどうしても、「体そのものを自然な状態に向かって整えていく」 ことに置くことになる。
それで痛みがすぐに消えることももちろんあるが、体の状態が良くない人の場合、痛みを抱えたまま頑張ってもらうことも少なくない。

痛みも他のいろいろな症状も、体の働きが上手くいっていないことの結果であって、症状だけを抑えることをしても、根本的な解決には至らないことが多い。
痛みなどの症状が現れたことは、体のアラートであって、それをきっかけに体そのもののあり方を改善していくことが整体のメインテーマなのである。

・・・ が、しかし、どんな状態の膝でも3回で痛みを無くす技術があったら、それはもちろん素晴らしい。始めに痛みを取っておいて、それからじっくりと体の改善に取り組んでいただければいいのだから・・・。

体のことに絶対ということはないし、必ずしも早く痛みを止めることが良い場合ばかりでもないが、痛みを止める技術も高度であればあるほどいいに決まっている。使うか使わないかは、その後の問題だ。
痛み止めの操法も、もっと研究しなければならない。立て看板のおかげで、また新たに意欲が湧いてきた。

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