健康生活のしおり

二日酔い

ときたま、「昨日遅くまで飲んでまして・・・」 などとまだ赤い顔をして来院される方がいたりする。場合によっては気分が悪くて吐きそうとか、頭がガンガンするなどの症状を訴えることもある。つまり、二日酔いだ。

お酒といえば肝臓だが、胃だの腸だの、消化管は皆それなりに影響を受けている。消化器系を整えるように操法すると気分はグッと楽になる。
肝臓といえば第9胸椎の右が連想されるが、今までの経験では、二日酔いには第2胸椎、第4胸椎の右三側を刺激すると効果が高い。刺激の仕方には、ちょっとしたコツがいるが・・・。

あとは腎臓の働きを調整する。これは背骨の操作も悪くないが、体を捻じっておくか、側腹を刺激しておくと、これまた体が一気に軽くなる。

自分でやる場合、捻じるのは座ったまま体を捻じれるだけ捻じっておいて、フッと急に力を抜いて元に戻る。これを左右交互に5回~8回ほどおこなう。
側腹、つまり脇腹のことだが、体の側面の肋骨と骨盤の間の骨のないところをつまんで外に引っ張り出してパッと離す。これをやはり5~8回ほどおこなう。うまくパッと話せない場合は、つまんで30秒~1分ぐらい愉気してもいい。

回数や時間はあくまでもは目安で、もっと多くても少なくてもいい。

頚上の蒸しタオル

今日の東京の最高気温は30度の予想らしい。最高気温30度を過ごしやすいと感じるくらい今年の夏は酷暑である。

このところの尋常ではない暑さと冷房による冷えとで、体調を崩している人は少なくない。
夏風邪、頭痛・頭重、吐き気、めまい、しゃっくりが止まらないなどなど・・・、暑いと寒いを行ったり来たりしているうちに、頚が硬直してカチカチに固まってしまっていることが多い。

こうした症状の人には、頚を蒸しタオルで温めることをお奨めしている。温タオルを当てて気持ちの良いところを10分程度温める。その後さらに 「頚上(けいじょう)」 を同様に8分間温める。
頚上とは、頚と頭の境目の中央で後頭骨が谷間のように切れ込んでいるところ。いわゆるぼんの窪と呼ばれる部分である。

頚部及び頚上の蒸しタオルは、夏から秋の前半ぐらいまでは、冷房病や寝冷え、汗の内攻に対処する方法としてよく用いられる。

蒸しタオルは、濡らしてしぼったタオルをレンジでチンでよいが、ビニール袋などに入れずに直接当てるのがポイント。濡れないようにとビニール袋などに入れて当てると、余分な熱が放散せずにのぼせてしまう。

暑い夏に更に温めるのか、と思うかもしれないが、必要がある人は心地よく感じる。逆に言えば、当ててみて不快だったら体の状態に合っていないということなので他の方法を考える方がいい。

もちろん熱中症の場合は症状を悪化させてしまう可能性が高いので、注意が必要である。熱中症の場合は、前頭部を氷水で冷やすとよい。氷嚢を当てる場所は、頭のてっぺんと髪の生え際の中間あたりで、赤ちゃんのときに柔らかくぺこぺことへこんでいる大泉門という場所。ひよめきとも呼ばれるところである。
ちょっと頭が痛いとか気分が悪いとかいうときには結構楽になることが多い。ただし、症状が重ければ、腋の下や太ももの内側など動脈が浅いところを走っている部分を冷やした方がよい。意識が朦朧とするような重症の場合は、迷わずに救急車を呼ばなければならない。

ヒートショックとヒートショック・プロテイン その2

前回の記事からの続きだが、昨今の入浴の流行りは、ぬるいお風呂にゆっくり浸かるというリラックス志向である。

整体流の 「熱め、短め」 は、交感神経が緊張して寝付きが悪くなるとか、それこそヒートショックを引き起こすとか、医学・科学の分野の研究ではどちらかというと分が悪い。

しかし一方で、整体流を援護する科学的研究結果もあったりする。その一つが、ヒートショック・プロテイン(熱ショックタンパク質)だ。
熱ショックタンパク質とは、細胞が熱などのストレス化に置かれたときに発現が上昇して細胞を保護するタンパク質のことだ。このたんぱく質が活性化すると、具体的な御利益としては肌のツヤが良くなったり、免疫力がアップしたり、代謝が上がって冷え性や低体温が改善したりするという。原理的には、しなしなのレタスが50度洗いでシャキッとする、というのと同じことらしい。

これらの御利益は、整体の世界では熱めのお風呂に期待する効用としては極々常識的なものである。

熱ショックタンパク質に関しては、数年前から健康番組などで取り上げられてたようだが、最近ではリオ・オリンピックの陸上選手が、温度が高めの入浴法を取り入れて成果を上げたということが一部で話題になった。試合の2日前に熱めの風呂に入るのが、もっとも試合当日に力を発揮しやすいらしい。

 

整体の流儀は昔から変わらないのだが、時の流行りや科学の新常識などによって、整体は非科学的だとか逆に科学の先を行っているとか、いろいろと世間の評価が変わるのが面白い。

呼吸器を良くするのに目に愉気をするとか、脱肛を頭のてっぺんで治すとか、そんなものは科学的ではない、というようなことは整体創成期からたえず言われているようだ。
逆に、後から医学・科学の分野が追いつくこともあり、やっぱり整体はすごいとか、野口先生は天才だったとかいうこともある。(それだって、また新しい論文が出て二転三転するんだけれど・・・)

ある人は、整体は 「非科学的」 だといい、ある人は、「未科学的」、すなわち未だ科学では解明できない分野であるという。

私にとっては、正直どっちでもいい。そもそも、整体は科学ではない、と考えているから。
茶道や華道、武術、美術、音楽が科学ではないのと同じ感覚で、整体も科学ではない。

科学・医学の知識が整体の役に立つことは大いにある。しかし、別に整体が科学的である必要はないと思う。
医学は、もしかしたら大部分が科学なのかもしれないが、整体はどちらかというと人と人とのコミュニケーションだと考えている(潜在意識、無意識の領域まで含めての・・・)。

 

さて、熱めのお風呂に入る場合、その適温は何度ということではなく、入る前に湯を手でかき混ぜてちょうどよい湯加減を決める。
ぬるくては、体を引き締め活性化する効果はない。熱いけれど、気持ちいい温度、それが適温である。

ぬるいお湯に浸かって、後から追い焚きなどで加温するのは、余計に体がたるむのでよろしくない(中毒解消にはあく抜きのようなこの入り方が役に立つ)。あらかじめ適温にしておいてから入浴する。

いつまでも入っていられるようではお湯がぬるい。何分かしたら出たくなるくらいの温度がよい。
お湯から上がるタイミングは、温まり切るほんの直前で出るのがよい。それを越して入っていると逆上せてしまう。

足先が冷えるような人は、お湯から上がるときに足だけ湯に浸けたままで体を拭いて、その間足だけ余分に暖めておくといい。

ヒートショックとヒートショック・プロテイン その1

最近、メディアなどでヒートショックに関する注意喚起がしきりになされている。

ご存じだろうが、ヒートショックとは、寒い脱衣所や浴室で衣服を脱いで寒さにさらされた上に熱いお風呂に入ることで、急な温度変化にさらされ血圧などが急激に変化することをいう。場合によっては、脳卒中や心筋梗塞などを引き起こす恐れがある。

テレビの健康番組などでも、入浴温度はだいたい41度以下を推奨しているようだ。

一方整体では、日常的に入るお風呂の温度としては 「熱め」 を奨めていて、何度とは決められないが、42度くらいが標準的とされている。
つまり、体の感受性にもよるのだが平均的に42度が熱いとぬるいの境で、整体は熱いお風呂を、医師などはぬるいお風呂を推奨しているということである。

整体でぬるいお風呂を奨めない理由は、体がたるんでしまうからだ。つまりは、体が伸びきったゴムのようになって、元気が出なくなる。体がゆるむのは良いことだが、たるむのはいただけない。
たるむというのは、力が入らなくなるということであって、生きる活力が低下してしまう。例えば朝が起きづらいとか、意欲が湧かないとか、ともかく元気が出なくなる。
もちろんリラックスはよいことだが、引き締まりがなければ、ただのヘナヘナになってしまう。弓の弦も強く張りすぎれば切れてしまうが、たるんでいれば役に立たない。ちょうどよく張られた弓の様に体を活性化する入浴法が、ちょっと熱めのお風呂に短めに入るという方法なのだ。

さて、私の家内の実家は東京の下町にあるのだが、そのあたりでは銭湯文化が根付いていて、内風呂がある人でも結構ふだんから銭湯に行ったりする。
最近は時代も変わって、そのあたりにもお湯のぬるい銭湯があるが、20年ほど前までは、軒並み熱いお湯のお風呂屋さんばかりだった。しかも、その熱さといえば尋常ではなく、サッと手を入れると入れたところまでがキレイに真っ赤になるといった具合で、はじめて入ったときには、大げさではなくあまりの熱さに手足の爪が剥がれるかと思ったほどだ。

そんなお湯の熱いお風呂屋さんでも、湯中りぐらいはあっても、倒れる人が出たというような話はとんと聞いたこともない。
お風呂屋さんでは、脱衣所も暖かだし、体を洗ってからお湯に浸かるのがマナーであるから、ヒートショックも起こりづらいのではないだろうか。
もちろん、あまりに熱いお湯では体に悪いのは当然だが、気持ちの良い範囲の温度であれば、熱めの風呂自体が悪いということではない。(もちろん、心臓や血圧に問題がある人の場合は、それなりの配慮がなくてはならない)

ヒート(熱)のショックというから熱い風呂が悪いような印象だが、どちらかというと問題は急激な温度差にある。脱衣所や浴室で素肌が寒気にさらされて、ブルブルっと来るのが最初のショックなのだ。

できれば、脱衣所や浴室にも何らかの暖房設備を設置するのが最良の対策だろう。
しかし浴室などはそれもなかなか難しいであろうことから、最近ではシャワーで高いところからお湯を張るとか、入浴前にしばらくシャワーでお湯を出しっぱなしにしておいて、浴室の温度を上げておくことなどが奨められている。

またお風呂以外にも、夜中のトイレなど、暖かい布団から急に寒いところに出ると、やはり血圧が急変して危険なことがある。
廊下やトイレも暖かければそれにこしたことはないが、寝室にちょっと羽織れるものやスリッパなどを用意しておくのもよいかもしれない。

「趾」 あしゆび

最近、「浮き指」 が注目されている。浮き指とは、足の指が反ってしまい地面につかないものをいうそうだ。足の横方向のアーチがつぶれることと関係があるともいう。

普通に立って足指が反って浮いてしまっているのはもちろん足指が使えない状態だが、見た目は足指が地面に着いていても、実際には力が入っておらず役に立っていない場合もある。
これは浮き指とはいわないのかもしれないが、浮き指予備軍でもあり、実質的には軽度の浮き指ということになるのではないだろうか。

前後に25センチある足の人も、足指が使えていなければ、実質的には長さ20センチになってしまう。当然、体を支える面積もだいぶ減少してしまう。
大きな体を小さな足裏で支えて、重心のコントロールをしなければならないのであるから、縦方向の5センチ減は、結構な痛手である。

しかも、足指が使えない状態であるということは、目に見える足指の続きである足の甲の中にある 「中足骨」 もうまく働いていないということは明らかである。

中足骨と踵骨(かかとの骨)の間には、三つの楔状骨、立方骨、舟状骨、距骨があり、それらの骨格パーツが少しずついろんなことを分担して体を支えたり歩いたりしている。細かい作業を担当している手と比べると動きは小さく見えるが、本来足裏・足指の性能は、手とはまた違った意味で非常に高度なものなのである。

しかし、足指が使えなくなっているということは、すでに足全体の機能がかなり縮小した状態であるといえる。支える面積が減った上に、機能も低下しているのだから、足の持つ体を支える能力は相当なレベルダウンである。
そうなると、足以外の部分、例えば下腿、膝、大腿、股関節、臀部、腰などが、本来足裏で調整していた分の立位保持の仕事を負担しようとする。当然本来なら要らない力が体の各部に入るようになり、それが続くとだんだんと筋肉は硬直して体は固まってくる。
体が固まると、なおさらバランスをとる機能は低下する。長細く縦に立っている体を倒れないようにバランスをとるには、本来体を柔らかく使えるほど有利なのだが、固まる程にバランスを取るのは難しくなるため、ますます力に頼って更に体を固めていくという、まことに非合理的な悪循環の連鎖に陥ってしまう。

この体の硬直は、下半身にとどまらず、頚や頭まで波及していくことになるので、肩こりやひどいと頭痛などの遠因にもなる。
また、本当なら力を入れなくてよいところに力が入り続けるので、足が必要以上に太くなったり、腰回り太くなったりするので、美容の面でもよろしくない。

 

さて、ではどうしたらいいのかといえば、はじめに戻って足指が地面に着いて、しかもしっかり地面を押さえられるように訓練するのがいいのである。

浮き指は、足指が反ってしまっているのだから、当然足裏方向に曲げることが苦手になっている。それを曲げる練習をすると、だんだんと曲がるようにもなるし、足指が地面を押さえる力も出てくる。まずは曲がらないことには、働きようもないのだ。
具体的にはどうすればよいかといえば、足指ジャンケンのグーをする。反らすの反対、足指を丸めるように曲げるのだ。

当院に通われてこられる方々に足の指を曲げてもらってみると、一番付け根の関節(中足趾節関節)が曲がらない人が多い。中には、付け根の関節がほとんど曲がらない人もいる。
これを毎日曲げるように練習してもらうと、少しずつだがだんだんと関節が曲がるようになってくる。ほんのちょっとでも曲がるようになると、その分足の性能が上がるので、体全体からすると不必要な緊張が減って楽になるのである。

ちなみに私は結構曲がる方である。ほとんどの人に、「そんなに曲がるものですか!?」 と驚かれる。パッと見は、軽く握ったこぶしぐらい丸くなる。
調子に乗って、「こうやって立つこともできますよ」 と足先の足指を曲げた部分で立って見せていたら、だんだん痛くなってきたので、最近はやめている。
まあ、そもそも最初からそこで立つ必要はまったくないので・・・。

指を曲げる練習は、まずは自力で曲げることが第一である。慣れてきたら、指先に少し力を入れて簀巻きでものを巻きこむような感じできっちり巻き込む練習するとよい。
一定期間続けたら、今度は足指の上に手の指四本を重ねて補助するように曲げてみる。はじめはあまり力を入れず、少しずつ慣らすようにする。いきなり力を入れてやると痛めてしまうこともあるので要注意。
それにも慣れて、足が痛くなることがなければ、今度は手のひらを重ねてまさに簀巻きで巻くように足指を巻いていく。手のひらを当てると、手指のときよりも力が強くかかるので、これもまた用心深く少しずつ少しずつ慣らしながらおこなおう。

足の能力開発にはほかにもいろいろな方向性があるが、足指が地面を捉えられるようになるには、まずは曲がるようにすることが第一なので、とりあえず足指曲げがお勧めなのである。

 

前回の記事でも関連記事として紹介したのだが、整体操法随想 というもう一つのブログの方に足指・足裏のことを書いた記事があるので今回も紹介したい。
ただし、こちらの記事で紹介している内容は、整体操法や武術など特殊な体の使い方に関してのもので、自然に歩くときなどはあまり意識せずに足を使った方がよいことが多い。

そちらのブログの方は、どちらかというと私的なブログというか、好き勝手なことを自由に書いている。このブログと白山治療院のHPにリンクがあるだけで、検索エンジンの検索にも掛からないように設定してあるので、縁のある人がたどり着いたら読んでください、といったスタンスで書いている。

~ 関連記事 ~

功夫口訣5 ~ 十趾抓地 ~

「足は親指」 の続き・・・。

五本指靴下

みなさんご存じだろうが、五本指靴下というものがある。足袋は親指とその他の四本指の二つに分かれているが、その五本指版である。

はじめて五本指靴下を履いたのは確か大学生のときだったと記憶しているが、その時からどうも窮屈で好きになれなかった。その頃は、指と指の間に布が二枚挟まるわけだから、それがきついのだろうかなどと思っていた。

最近、親戚の集まりで 「五本指ソックス」 の話題が出たことがあり、そういえばなぜ自分は好きになれなかったのかと考えてみた。今になればよくわかるが、五本指靴下は五本の指をそれぞれ自由にする目的で作られているのに、かえって指の動き制限してしまっているからだ。(水虫予防にはいいのかもしれないが・・・)

足の指を観察していただけばわかる通り、指の股の部分は骨格的には指のつけ根よりも先の方にある。その指の股に合わせて指を布で包んでしまうのだから、足指の動きは当然窮屈になってしまう。

手の指を見てもわかるけれど、拳を握ってグーにすると、指の骨は指の股よりずっと手の甲の方まで続いている。手の平側で見てみれば、指の付け根の関節は指の股どころか、手相でいう感情線あたりから曲るのがわかる。足の指のつくりもだいたい同じなのだ。

手袋の場合は、素材の伸縮性やデザインで動かしやすいように作られているのであまり窮屈ではないが、五本指靴下の場合、そこまで考えれていないものの方が多いのだろう。
おかげで、小さい手袋を無理にはめたような窮屈さが生まれてしまうのだ。

更にいうと、足の甲の中に中足骨という指の続きの骨があり、足の指は五本それぞれが、五本の中足骨につながっている。手の指も同様に中手骨につながっている。
手の親指と小指の先をつけようとすると手の平がすぼまるが、これは掌の中の中手骨が動いているのである。
手ほど器用に動きはしないが、足の指も中足骨と連動して働いている。五本指靴下は、足指と中足骨の連動も多少ではあるが邪魔してしまうのだ。

といったわけで、私は断然普通の靴下派なのだが、足指を使う場合は第2趾から第5趾を手のようにばらばらに細かく使うことはほとんどないし、多くは親指と他の四指セットの拮抗運動なので、足袋はそれほど窮屈な感じがしない。四本指もそれなりに中で動かせるようになっているし・・・。

 

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運動と労働

歩くことは体にいい。「歩く」 のは、人間の最も基本的な運動形態であるから、膝や股関節など下肢に故障がない限り、誰にでもおすすめの運動である。 

妊娠中の運動も、歩くことが基本である。整体では、妊婦さんに30分から1時間程度の散歩を勧めている。
マタニティ・ヨガなどもよいのだろうが、普段運動する習慣のない人だと、それで体を壊してしまう人もいる。水泳やプールで泳ぐのも運動の質としてはよいが、体が冷えるのが妊婦にはよろしくない。

 

さて、治療院に通って来られる方々に歩くことを勧めることはよくある。けっこう、「毎日、通勤で歩いています」 とか、「スーパーまでの行き返りで往復40分歩きます」 などという返事が返ってくることがあるのだが、それとは別に歩いてくださいということが多い。

同じ歩くのでも、運動と労働は体に与える影響が違う。健康のためを思って歩くのであれば、歩くためだけに歩いた方が効果が高い。

もちろん、買い物や通勤でなるべく歩くのはよいことだ。エスカレーターを避けて階段で行くというのも身体が鍛えられてよい。
ただ、健康法と考えると、やはり 「ウオーキング」 の時間を別にとれる方が望ましい。

なぜかというと、労働や移動で歩くのは、あまり体に意識が向いていない。それに対して、運動として歩く場合は、歩く速度や歩幅、姿勢など、体に絶えず目が向くので、体と対話しながら歩くことができる。そのため無理をし過ぎないですむし、運動の質も高くなる。
また、歩くためだけに歩く場合、手ぶらかそれに近い状態で歩けるが、仕事や買い物ではなかなかそうもいかない。場合によっては、重い荷物を不自然な状態で持って歩かなければならないこともある。

同じ歩くという行為でも、運動と労働では、体に与える影響は大きく変わってくるのである。
営業で毎日1万歩、2万歩と歩いている人が、それで健康になるどころか、かえって体がこわばっていて故障が多いというのもこのためである。

また、運動のために歩くという場合は、おおよそ自発的に行うことが多いだろう。それに比べて仕事や用事で歩くのは、必ずしもそうではなく、時には仕方なくイヤイヤ歩くこともあるだろう。
人間は自発的に行動するときには、心身のエネルギーがその目的に向けて動員されるので、疲れも少ないし、体を壊すことも少ない。もちろん、行動のパフォーマンスも高くなる。
受け身で、仕方なくやることは、体も十分に機能を発揮せず、疲れるし能率も上がらない。その上、やり終わっても、爽快感も充実感もない。

仕方なしにやることも、自分なりに工夫してモチベーションを高めたり、視点を切り替えたりして興味をもって自発的に行うようにするとだいぶ変わってくる。

・・・のだが、それには、それなりの心のスキルも必要なので、とりあえず歩くためだけに歩くことがおすすめなのである。

口の中を意識してみると・・・

食後にお腹が痛くなり下痢をしてしまう、という人がたまにいる。多くの場合、食べる速度が速すぎるのが原因である。

胃に食物が入ると腸が動くという反射があるのだが、どうも勢いよく食べ過ぎると、腸が過敏に反応して下痢が起こるということのようだ。

取りあえず、ゆっくり食べるようにしてみて下さい、とアドバイスをすると、大抵の人はそれで大丈夫になる。

 

ところが、中にはゆっくり食べること自体が難しい、どうしても気づくと勢いよく食べてしまっているという人がいる。
そういう人には、口の中に意識を向けて食べてみて下さい、と言うと結構上手くいく。

食べるときに口の中に意識を向けて見ると、いろいろな発見がある。

どうやらいつもはよく噛まずに飲み込んでいるらしいとか、あまり味わわずに飲み込んでいたようだとか、そういうことに気づくので面白い。

 

咀嚼するときに口の中の歯の動き、舌の動きなどを意識していると、早食いも治るが、片噛みの防止にもなる。無意識に噛んでいる時には、左右どちらか片方で噛む癖があっても、ただ意識を向けるだけで割とまんべんなく歯を使って噛むようになる。

片噛みというと左右差ばかり考えるが、上下の片噛みとでもいうものもある。多くの人は、下の歯(下顎)ばかりに意識が集まりやすい。これは上顎は顔面頭蓋に固定されているので、動く下顎に意識が向きやすいということなのだが、本当は上下の歯を均等に使うという意識(イメージ)で噛んだ方が無理なく咀嚼ができる。
下顎ばかりで噛もうとすると、頚椎にも余分な力みが生じて、ひどいとものを食べるだけで頚が疲れたり凝ったりすることになる。

また、食べ物は歯で噛むものなのだが、顎に力を入れて顎で噛んでいる人が多い。実は私もそうだったのだが、口内に意識を向けるだけで、顎に余分な力を入れずに噛めるようになる。
顎に必要以上の力を入れて噛む癖がある人は、これを意識するだけでもだんだんと楽に噛めるようになる。顎関節症の予防にもなるだろうし、歯に掛かる負担も減るかもしれない。
夜間の噛み締め、歯ぎしりをする人は、心理的な要因もあるが、そもそも顎関節に異常があることが多いので、力を入れずに噛む本来の噛み方を体が思い出せば、そういったことにも良い効果が期待できるのではないだろうか。

そして、口の中を意識するだけで味覚も鮮明になるので、おいしいものはよりおいしく食べられる。ただし、まずいものもよくわかるようになるので、味に頓着してこなかった人は、しばらく困惑するかもしれない。
それでも、感覚が鮮明になることはよいことで、体に合わないものは食べたくなくなるし、適量を超えても美味しく感じなくなるので、質量ともに自分に合うように食べられるようになる。

 目からウロコ・・・ ~ 脚湯法 ~

年末に、久しぶりに神保町界隈をぶらぶらした。喫茶店をはしごし、古書店なども見てまわった。マニアックな本が揃っていることで知られる書泉グランデや大手大型書店の三省堂なども、数年ぶりに行ってみた。

いつも本を買ってしまうときには大量に買い込んでしまうことが多いのだが、散々見て歩いた割には収穫はたったの4冊だった。こういうものにも波があって、今回は幸か不幸か購買意欲が低い時期だったようだ。

 

さて、三省堂では、野口晴哉先生の初期の有名なお弟子さんのお弟子さんが書かれた整体の本を見つけた。こちらは購入しなかったのだが(スミマセン)、脚湯のやり方が書かれている項を見て思わず目からウロコが落ちた。

脚湯(きゃくとう)は、膝から下を湯につける野口整体の温法の一つで、寝冷え解消やお腹の調子を整えるなど、適応範囲の広い優れた家庭療法である。

脚湯をするときは、風呂を熱め沸かして、その中に立つかバスタブに腰掛けておこなっていた。
他の人にやってもらう場合も同様に指導していたのだが、「お湯がもったいない(不経済)」、「お湯をためるのに時間がかかる(面倒くさい)」、などの理由で足湯(そくとう)に比べて人気がなかった。
もちろん、実践する人はいつでも実践するのだが、しない人の気持ちもわからないではないので、本当にやった方がいいという人以外にはあまり強くは勧めないことも多かった。

ところが、件の本にはそれらの問題を一気に解決できる方法が載っていた。
そのやり方とは、バスタブの中に膝立ちになって行うという方法だった。

バスタブに膝(から足の甲)をついておこなえば、お湯の量は少なくて済む。これなら、経済的だしお湯をためる時間も短くて済む。

なぜ、こんなに簡単なことに気が付かなかったのかと、しばし呆然としてしまったのだが、なにはともあれ、まさに目からウロコが落ちた瞬間だった。

 

試しに脚湯で検索してみたところ、この方法を紹介しているところもあるので、実はポピュラーな方法なのかもしれない。

ただ、下にタオルなどを敷くとしても、膝などに故障を抱えている人には難しいかもしれない。また、小さいお風呂よりも大浴場の方が体の温まりがいいのと同じで、脚湯も本来はたっぷりのお湯で行った方が効果的ではあると思う。

といったことはあるのだが、やらないよりは次善の策でもやってもらった方がよいに決まっている。

まあこういうことは、本当にやる人はいつでもやるし、面倒くさがりの人は、簡単な方法でも結局はやらなかったりもするのだが、とりあえず最近はやりそうもない人にはこの方法も併せて紹介させてもらっている。

食後にお菓子を食べてしまう場合 (追記あり)

昼食後、夕食後などに、食事で十分お腹がふくれているのに、更に何か食べないと気が済まないという人がたまにいる。

それは甘いものだったり、おせんべいだったりするのだそうだが、もはや基本的には食後に何かを食べないという選択肢はないのだという。

と言いながら、どうしたら止められますか、と訊かれるわけだが、多くの場合で効果を上げるのは、お酢を飲むという方法だ。

食後に、お酢を水で薄めて飲む。そうすると、あら不思議、それ以上何かを食べたいという気持ちがなくなってしまう。

いままでこの方法で、結構たくさんの人の別腹をなだめてきた。大して手間もかからない、いい方法だと思う。

お酢は、できれば合成酢ではなく自然由来のものがいい。飲みやすく作られているリンゴ酢などよりも、純米酢などの酸っぱいものが向いている。
あまり濃いと胃が焼けるので、酸っぱさを残しながらもそこそこ薄めて飲む。それほど濃くなくても十分効果がある。量は、薄めた後でコップ半分から八分目程度。

食後のデザートも生活の彩りの一つだから、無理に止めるばかりがいいということもないが、止めたいのに止められない人、際限なく食べてしまうという人は試してみてほしい。

食後にまた食べてしまうのは、食事自体に心か体が満足していないということもあるから、思い当たる人は、そちらを改善するのも大切かもしれない。
また、こういったことは習慣でもあるので、お酢を飲んで食後に食べないことが当たり前になったら、お酢を飲むのも終わりでいい。

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追記

酸蝕歯を防ぐ観点から、水で薄めたお酢は口中にためずに少量ずつすぐに飲み込んでしまった方が良いようです。

また、お酢を飲んだ後は、すぐにうがいをしておくのも酸蝕歯を防ぐ上で有効です。
食後のうがいは歯垢がつきにくくもなりますので、お酢を飲むとき以外でもおすすめです。

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