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2016年2月 7日 (日)

「誘導」 と 「拮抗」 

野口整体における整体操法は、「操法」 というぐらいであるから、相手の体を操る技術である。そして、「操る」 という中には、受け手をぐでんぐでんに脱力した無反応の状態にしてこちらの好きなように動かすということではなく、相手の自立性・自律性を失わせないまま、相手の動きを 「誘導」 するという意味がある。

そのとき受け手は、こちらに動かされているのか自分から動いているのか判然としないような感覚、もしくは自然にそう動いてしまったというような感覚になっていることが望ましい。つまりは、相手に抵抗・反発を起こさせないように動きを 「誘導」 するのである。

 

そして、その操る法、「操法」 において、誘導と表裏一体となっているのは、相手の反発を引き出すことである。操法においては、多くはその相手からの反発を使って体を調整しているのである。

例えば、座位、立位などでは、相手の態勢をあえて崩して、相手がバランスを取り戻そうとするその力を利用して体を調整したりする。

整体操法では、相手の抵抗、反発をこちら側の力と合わせ、「拮抗」 させることが、身体調整技術の基礎の一つになっているのである。これが、操法は 「相手の力を使って調整する」 ということの意味の一つである。

 

正しく相手の反発を引き出せるようになるためには、まずは相手に抵抗を起こさせないように触り、動かすことができなければならない。それができるようになって、はじめてこちらの意図するように相手の反発を引き出し、その反発を利用することができるようになる。

相手が息を吸ってくるときに盛り上がってくる腹部や背部、腰部などと、こちらの押さえる力を合わせ、「拮抗」 させて調整するということは、整圧においては基礎となっている。

技術として相手の吸いの息を利用するには、ただ相手の自然の呼吸を使うのではなく、息を吸わせることそのものを術者がコントロールできなければならない。大きく吸わせる、強く吸わせる、急速に短く吸わせるなど、相手の体に与えたい刺激によってこちらが吸わせたいように吸わせるという技術である。

この場合も、まずは相手に抵抗されないように、素直に息を吐かせていく技術が元にある。相手にしてみると、自然に息を吐いてしまう、もしくは気がつけば息を吐かされてしまっていた、という感覚である。
基本的には、自由に息を吐かせることができて、はじめて自由に吸わせることができるようになる。ひいては、相手の呼吸を操法の技術として使えるようになるのである。

 

整体操法とは 「体術」 であるので、当然のことながら術者の身体操作能力と操法の効果はある程度比例する。そして、そもそも術者の体の 「在り方」 が、受け手の体の変化に大いに反映していく。

例えば、術者の体がガチガチに強張っていれば、その体を以て操法しても、受け手の体をゆるませることは難しい。
術者の呼吸がせわしなければ、受け手の呼吸がゆったりと深くなっていくということは無い。
それゆえに、整体操法をおこなうものは、常に自分の体を鈍らせないように保ち、またより向上させようと修練に励むのである。

相手の体に抵抗を起こさないように誘導するためには、術者自身の体が抵抗なく動けることが求められる。強張りがなく、引っかかりがなく、つっかえない、思ったように動く身体が必要である。

同様に、相手の力を引き出してこちらの力との拮抗をうまく使うには、本当の意味で止まることができ、動かないことができ、受ける力、支える力が術者の身体操作として備わっていなければならない。

操法をおこなうものは、「誘導」 や 「拮抗」 といった技術の基礎をより安定させるために、そのような体を構築し、その力を高めようとし続けることになる。

技術を磨くことは技術者として当然のことであるが、並行して、また別に技術を揮うための体作りというものも必要になってくる。技術を高める訓練の中でその技術を可能にする身体がつくられていくことは当然あるが、力士が四股を踏み、ボクサーがランニングをするように、整体でもある程度体作りというものが必要になってくる。
活元運動、合掌行気法、深息法、気合法などは、まさにその基礎的なものである。

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